『鑑定士と顔のない依頼人』特集:表編&裏編~見方を変えれば180度違うストーリーに!?~
すご腕の美術鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)と、謎めいた依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)の恋。その裏では、ヴァージルの長年のパートナーが用意周到に計画した復讐(ふくしゅう)劇が進められていた……。あえて、随所に仕掛けられていた罠や伏線を完全ネタバレ。それらを知れば知るほど、緻密かつ複雑な構成にうなり、クレアがヴァージルに向けた愛の真偽を確かめたくなる。裏のストーリーを知り尽くした上で、真相を確かめよう!
ヴァージルのコレクション収集に手を貸してきたビリー(ドナルド・サザーランド)だが、彼はヴァージルが自分の画家としての才能を認めないことに不満を募らせてきた。物語の終盤、引退を宣言し、パートナーを解消したヴァージルにはなむけとして贈ったのは、ヴァージルの持論「贋作(がんさく)者は必ず痕跡を残す」に当て付けるかのように、自らのサインを入れた一枚の絵。それはビリーが計画の首謀者であることを知らせるものだった。ビリーは、なぜ安い報酬に甘んじてヴァージルを助けてきたのか? 冒頭近くでビリーが、自らの境遇を嘆く場面にカギが!
クレアの屋敷にヴァージルが足しげく通ったのは、屋敷の地下で機械人形の部品を拾い集めるため。さらに、それを修理人ロバート(ジム・スタージェス)のもとへと運ぶたびにクレアとの出来事を語り、彼にたきつけられて恋の炎が燃え上がる。「彼を信じるな」と忠告するロバートの恋人も、“親切に”部品集めを手伝ってくれたクレアの使用人もみなグル。機械人形の部品は、はなからヴァージルを罠に誘うためのエサだったのだ。部品の経年状態をめぐるヴァージルのセリフが、悲しい伏線になっている。
人間嫌いで恋愛とは無縁だったヴァージルを、甘い愛のささやきと気性の激しさで翻弄(ほんろう)し、とりこにするクレア。その目的は、彼の秘蔵コレクション収蔵室に入るため。十数年も外出していないとは思えないほど身なりがあか抜けていたり、出会った頃からヴァージルの経歴を知り尽くしていたり、思い返せば不審点は少なくない。果たして、クレアが最後に告げる「何が起きようと、あなたを愛している」という言葉も偽りなのだろうか……?
ヴァージルを決定的に打ちのめしたのは、カフェの女がつぶやいていた数字や言葉の真意。実は、彼女は目にしたもの全てを記憶してしまう能力を持っており、屋敷から出ていないはずのクレアが、何と237回も外出していたこと、さらに自身の名がクレアで、屋敷の本当の持ち主であることを告げる。店内でゲームに興じる青年が、彼女に感嘆する場面には大きな意味があったのだ!
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