だから監獄モノは面白い!『大脱出』に見る監獄アクション&脱獄劇の伝統
『大脱出』特集
2014年1月10日(金)より TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー
シルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーが本格初競演を果たした『大脱出』。脱獄のプロが謎の囚人と共に最新鋭刑務所から脱獄を企てる攻略型サスペンスアクション大作だ。本作のような刑務所、または戦時中の捕虜収容所は、独自のルールに基づく密室空間でさまざまな人間模様が渦巻くことから、作劇上において最高の舞台の一つ。数々の名作を生み出してきた伝統的なジャンル物ともいえる。“監獄アクション”&“脱獄劇”が楽しめる『大脱出』もまさにその系譜に連なる作品だ。そこで、過去の同ジャンルの代表作も振り返りつつ、その魅力に迫っていこう。
- 『大脱出』で見逃せないのは、やはりスタローンとシュワルツェネッガーの初の本格共演。自他共に認める大物ライバルスター同士が真っ向から演技をぶつけ合う姿は、まさに夢の競演と呼ぶにふさわしい。また、脱出不可能な絶海に浮かぶ“監獄要塞”から脱獄しようとするのが、以前なら共演不可能だと思われた二人であることは、まさに不可能を可能にするこの物語にもぴったりだ。
刑務所は荒くれ者たちが集まる場所ともなるだけに、同所を舞台にした作品は、本作のようなタフガイスターの出演が多い。また、独房でなければ仲間や敵も必須で群像劇になることもあるため、さまざまなスターの顔合わせが楽しめるのだ。そんなスター競演の代表作というと、こちらは戦時中の捕虜収容所からの脱走劇だが、スティーヴ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソンらが共演したオールスター映画『大脱走』が挙げられる。マックィーンにはダスティン・ホフマンとの二大スター共演作『パピヨン』もある。
- 本作のスタローンとシュワルツェネッガーは、まるで“ランボーVSコマンドー”のような激しいガンアクションも披露するが、誰もが期待する拳と拳、肉体と肉体がぶつかり合う対決シーンなど生身のアクションもたっぷりと見せてくれる。そんな刑務所が舞台の“監獄アクション”作品は、囚人同士のケンカから暴動まで、肉弾戦のアクションが見どころとなる。
特に生身のアクションが印象的な“監獄アクション”作品としては、スタローンが激しい虐待に耐え抜く『ロックアップ』、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが香港のリンゴ・ラム監督と組んだ『HELL ヘル』などで、リンゴ・ラム監督はチョウ・ユンファらが独裁的な看守に立ち向かう香港映画『プリズン・オン・ファイアー』も撮っている。また、『デッドロック』シリーズのように、獄中内でのボクシングや総合格闘技を描いた作品もこうした作品の一つに挙げられるだろう。
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- 『大脱出』でスタローンが演じるのは、司法省などからの依頼で身分を偽って収監された後、脱獄して警備体制の弱点を指摘することで報酬を得ているセキュリティーコンサルタントのブレスリン。そんな脱獄のプロにも成功条件には協力者の存在が不可欠なため、シュワルツェネッガー演じる囚人たちのボスのロットマイヤーと組むことになる。
そのブレスリンが、看守の行動パターンや刑務所の構造を徹底分析して一瞬の隙を突いてみせるように、脱獄劇とは地道な努力と忍耐を重ねて綿密な計画を立て、いかに己の知恵と勇気を振り絞って成し遂げるかのサスペンス劇でもある。そんな脱獄劇の代表作とは、共に実話を基にした作品で、ひたすら脱獄用の穴を掘り続けるジャック・ベッケル監督の遺作『穴』や、緻密な計画を練って鉄壁の牢獄島から抜け出すクリント・イーストウッド主演の『アルカトラズからの脱出』など。なお1963年にアルカトラズ島の刑務所は閉鎖されたが、『ザ・ロック』など多数の作品の舞台ともなっている。
- 『大脱出』のブレスリンはCIAの依頼で、危険な重犯罪者を収監した民間運営の私設刑務所から脱獄を企てる。つまり潜入捜査に近く、犯罪者が刑期を免れるためではない。刑務所や捕虜収容所は、悪人だけが収容されているとは限らないため、多彩な人間模様を描くのに絶好の舞台だが、脱獄を描く際にも、無実の罪の人物や戦時中の捕虜が敵軍から抜け出すことなどは、痛快さや感動を与えてくれる。
そうした過去の作品とは、サッカーの試合中に捕虜が脱走を試みるスタローン主演の『勝利への脱出』、カンヌ国際映画祭でロベール・ブレッソンが監督賞を受賞した『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』などで、刑務所内の人間ドラマの名作『ショーシャンクの空に』も冤罪(えんざい)の主人公の脱獄にはすがすがしささえあった。また、ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』のような、微罪の主人公が横暴な看守たちに屈せず反体制を貫いて脱走を繰り返す姿が共感を呼ぶ作品もある。
- 『大脱出』のブレスリンが、身近な物を活用して位置測定のコンパスなどを作ってみせるように、脱獄計画には必要な道具をいかに調達していくのかのアイデアも重要。また、本作に登場する海に浮かぶ“監獄要塞”やその内部のガラスに囲まれた異様な独房などのように、現代や未来の刑務所は最新鋭設備が導入されたハイテク施設として描かれることもある。そういった施設をいかに攻略するかは、頭脳戦や心理戦と共に、脱獄用アイテムを入手したり謎解きしていくようなゲーム性の楽しさも増すことになる。
なお、刑務所ではないものの、閉じ込められた謎の立方体から脱出を図る『CUBE』シリーズや、監禁された者たちが不条理な状況に追い詰められていく『ソウ』シリーズなどは、サイコスリラーにゲーム性の高い脱獄劇の要素が交じり合った作品ともいえるだろう。以降、多数の類作を生み出したように、その影響には大きなものがある。
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