第59回『アデル、ブルーは熱い色』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』『クローズEXPLODE』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アメイジング・スパイダーマン2』
今月の5つ星
『アメイジング・スパイダーマン2』&『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』、人気アメコミ大作2本をはじめ、カンヌ映画祭パルムドール受賞作『アデル、ブルーは熱い色』、「ごちそうさん」の東出昌大が不良高校生を熱演する『クローズEXPLODE』など、話題のGW映画がズラリ!
もろさが潜む猪突(ちょとつ)猛進の愛と、純粋で揺るぎない愛。二人のヒロイン、アデル(アデル・エグザルコプロス)とエマ(レア・セドゥ)のキャラクターを象徴するこの愛の違いが、一筋縄ではいかないドラマを生む。約3時間の長編に出ずっぱりでも耐え得る画(え)力を持つアデルの魅力は内側からほとばしる美しさ。彼女の本性の目覚めと歩みを見ていると、「無性に寂しさに襲われることのない幸せ」を感じずにはいられない。そっと寄り添うような優しい笑顔のエマとアデルが共に語る将来や夢にストーリーの時間軸を隠した演出は、説明過多の映画では得られない想像力が働く一方、いや応なく流れる時間を示されているようでもあり、アブデラティフ・ケシシュ監督が大きな木や海などの自然、家族、子供、愛、セックス、音楽、ダンス、芸術などの要素を用いて本作で描いたのは、今、この時を生きる「人生」そのものだということに気付かされる。(編集部・小松芙未)
エドガー・ライト監督×サイモン・ペッグ×ニック・フロストの名トリオが贈る『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』に続く3部作の完結編と位置付けられている作品。学生時代に成し遂げられなかった「12軒のハシゴ酒」に再挑戦するため20年ぶりに故郷に戻った5人の中年男が、図らずも町を侵略していたロボット軍団と命を懸けた戦いを繰り広げる姿を描く。5人がロボットの襲撃に遭いながらもハシゴ酒を続ける点が本作の面白さなのだが、それが次第に、他の4人と違って職や家庭など人生に確固としたものを持たず一見自由を謳歌(おうか)しているような主人公ゲイリー(サイモン)の「ハシゴ酒=学生時代の輝かしい思い出」に執着する痛々しさに変容していくさまは見事。完成度の高さは『ショーン・オブ・ザ・デッド』に及ばないが、こうした胸を締め付ける力は今までのシリーズにはなかったもので完結編にふさわしい。SF映画と1990年代のUKロックへの愛にあふれた、大人のための、たくさん笑ってちょっと泣けるコメディーだ。(編集部・市川遥)
前作から1か月後、新学期を迎えた鈴蘭高校を舞台に、空席になった「頂点」を目指して壮絶な抗争を繰り広げる男たちの姿を描いた本作。主演を務める「ごちそうさん」の東出昌大をはじめ、勝地涼らあまり不良感のないキャストのような気もするが、前作の小栗旬や山田孝之とはまた違った味で楽しませてくれる。他にも本作には早乙女太一、柳楽優弥、永山絢斗ら次世代の若手俳優がずらり。中でも、『ふがいない僕は空を見た』での好演が記憶に新しい永山は、過剰な暴力行為で少年院送りになりヤクザの道を歩む男を、ワイルドかつ繊細に熱演。兄・瑛太に引けを取らない役者だと改めて実感させられた。前作ファンには、拳さん(やべきょうすけ)や牧瀬(高橋努)らおなじみのキャラクターの登場もうれしい。(編集部・中山雄一朗)
前作『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』では、最新VFX技術を使ったひょろひょろのクリス・エヴァンスの姿に驚かされたが、本作ではエンターテインメント作品としての完成度の高さに興奮した。冒頭の人質奪還作戦で、キャップ(キャプテン・アメリカ)が高速で敵をなぎ倒していくシーンから、バイク、ヘリなどの壮絶チェイス、さらには巨大空中母艦でのスペクタクルなど、あらゆるアクション映画の魅力が存分に詰め込まれ、展開の速さに度肝を抜かれる。そして本作のために総合格闘技や器械体操を取り入れたクリス演じるキャップのパワーアップぶりや、新キャラとして登場するファルコンの飛行シーン、ブラック・ウィドウの活躍ぶりなどそれぞれの見せ場がしっかり描かれている。何といっても必見なのがウィンター・ソルジャーの存在。新たなダークヒーローの登場に女性ファンも増えるのでは? 原作ファンなら今後の展開も気になるだろう。前作や映画『アベンジャーズ』の流れもくみながら、次回作『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン(原題) / Avengers: Age of Ultron』への期待をあおる伏線もちらほら。最後の最後まで席を立たずに観てほしい。(編集部:山本優実)
人気アメコミヒーローの活躍を、キャスト・スタッフを一新して描くシリーズ第2弾。前作で新ヒーロー誕生を観客に印象付けたアンドリュー・ガーフィールドは、今回ますますスパイダーマンらしくなって帰ってきた。危機的状況でもジョークを忘れず、街の人々と触れ合う様子から「ニューヨークのヒーロー」といった印象が強くなり、より原作のテイストに近い作品になったといえるだろう。手慣れた2D撮影を選択したためか、マーク・ウェブ監督の演出もさえ渡っており、前作よりもはるかに爽快なアクションが展開。もちろん、スパイダーマンことピーターと恋人グウェン(エマ・ストーン)のさわやかでいとおしいカップルを描く、お得意の恋愛描写も健在だ。また敵役では、エレクトロを演じたジェイミー・フォックスが注目されているが、グリーン・ゴブリンことハリー・オズボーンを演じたデイン・デハーンも素晴らしい。その容姿は、男性ながらエマに匹敵するのでは(?)と思わされるどの美しさで、スクリーンから目が離せない。サム・ライミ版でハリーを演じたジェームズ・フランコ同様、本作をきっかけにさらなるブレイクを果たすのは必至だ。(編集部・入倉功一)