結婚式前日に死んだ女性の謎…オスカー監督後継者が描くミステリー:コンペティション部門先読み不可能な衝撃作4作【第28回東京国際映画祭】
第28回東京国際映画祭
11年ぶりの邦画3作品選出も話題になったコンペティション部門。観たい作品は数あれど限られた日程の中で、どの作品を観ればいいのかわからない。自分の好みの作品はどれなのか迷ってしまうという人のために、本部門のプログラミングディレクター・矢田部吉彦氏が全16作品の注目ポイントをズバリ解説!
『ガールズ・ハウス』
製作国:イラン
監督:シャーラム・シャーホセイニ
出演:ハメッド・ベーダッド、ラーナ・アザディワル、ババック・キャリミ
結婚式を翌日に控えた女性が死んだ。直前まで新居のカーテンを変えていたらしい。友人たちが調べ始める。しかし女性の父親は非協力的で要領を得ない。一体何が起きたのか。本当に死んだのか? 謎解きドラマの形を借りつつ、伝統的なイスラム社会の影に踏み込む衝撃のドラマ。
【矢田部氏のここに注目!】
イランの都会の悲劇を描いた作品で、我々の知らないイスラム社会の影をあらわにする物語はヘビーです。でも、ストーリーテリングがうまいし、フラッシュバックの使い方が絶妙なので、思わず引き込まれるはずです。
『家族の映画』
製作国:チェコ=ドイツ=スロベニア=フランス=スロバキア
監督:オルモ・オメルズ
出演:ダニエル・カドレツ、イェノヴェーファ・ボコヴァー、カレル・ローデン
冬休みを間近に控え、両親は一足先にヨット旅行に出かける。留守番の姉と弟は羽を伸ばして遊ぶが、やがて弟のサボりがバレ、事態は思わぬ方向へ……。幸せな家族に訪れる変化を、意表を突く展開と端正な映像で描き、未体験のエンディングが観客の胸をしめつけること必至の驚きのドラマ。
【矢田部氏のここに注目!】
現代の家族が持つ危うさ、脆さを新たな視点で描いていて、脚本が本当に秀逸。とても才能のある監督なので、多くの人に発見してもらいたい。ラストでは涙が止まりませんでした。
『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』
製作国:メキシコ
監督:ロドリゴ・プラ
出演:ジャナ・ラルイ、セバスティアン・アギーレ・ボエダ、エミリオ・エチェバリア
在宅介護していた夫の容体が急変する。慌てた妻は主治医に連絡を取ろうと必死になるが、事態は思わぬ方向に転がっていく……。平凡な主婦が絶望的な行動に走る様を、抜群のテクニックで描くノンストップ・サスペンス。本作が長編4作目となるプラ監督はラテン映画界の期待の才能。
【矢田部氏のここに注目!】
ヒロインの絶望的な行動を、脇の人物の小さなエピソードも盛り込み、緊張感を途切れさせずに75分でまとめた監督の演出力、編集の力には舌を巻きます。新たなストーリーテリングのあり方を提示していて見事です。
『ルクリ』
製作国:エストニア
監督:ヴェイコ・オウンプー
出演:ユハン・ウルフサク、ミルテル・ポフラ、エヴァ・クレメッツ
人里離れた土地で、自給自足の生活を送る数名の若者たち。突如戦闘機の轟音が鳴り響き、地域に戦争の気配が満ちていく……。時代を覆う不条理な空気を、個性的な音響と映像で描いていく問題作。『聖トニの誘惑』(TIFF10出品)で注目を浴びたエストニアの若き鬼才、V・オウンプー監督新作。
【矢田部氏のここに注目!】
アーティスティックな映像と独特な音響でゾワゾワとした不穏な空気を観る者の五感に訴えてきます。スゴいものを観たぞ! という強烈な印象の残る、16本の中で最もトンがった問題作です。
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