イーサン・ホークが実在のトランペット奏者で憑依演技:コンペティション部門人生いろいろ…悲喜こもごも4作【第28回東京国際映画祭】
第28回東京国際映画祭
11年ぶりの邦画3作品選出も話題になったコンペティション部門。観たい作品は数あれど限られた日程の中で、どの作品を観ればいいのかわからない。自分の好みの作品はどれなのか迷ってしまうという人のために、本部門のプログラミングディレクター・矢田部吉彦氏が全16作品の注目ポイントをズバリ解説!
『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』
製作国:アメリカ=カナダ=イギリス
監督:ロベール・ブドロー
出演:イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー
名ジャズ・トランペット奏者として一世を風靡した、チェット・ベイカーの苦闘の時代を描くドラマ。ドラッグに依存し、暴行されて歯を失い、どん底に落ちたチェットが再生を目指す姿を、イーサン・ホークが見事に再現する。シャープな映像とクールな音楽が抜群の官能をもたらす1本。
【矢田部氏のここに注目!】
イーサン・ホークがチェット・ベイカーの色男の部分と弱い部分を絶妙に体現していて、トランペットの演奏も抜群にうまい。物語も感動的ですし、音楽も超カッコいい。今年の目玉の1本です。
『神様の思し召し』
製作国:イタリア
監督:エドアルド・ファルコーネ
出演:マルコ・ジャッリーニ、アレッサンドロ・ガスマン
腕はピカイチだが、自信過剰で傲慢な外科医。世の中は自分の思い通りになると思っている。しかしある日、医大に通う息子に意外な告白をされたことで、彼の人生観に狂いが生じてくる…。巧みな展開に笑わされ、やがて人間の心の奥深さに感動する、フィールグッドな大人のコメディドラマ。
【矢田部氏のここに注目!】
映画祭の敷居が高いと思っている方はぜひこの作品から! 息子の告白がまるで予想しなかったもので、それによって父親の行動がズレ始めるのが面白い。爆笑の後の爽やかな感動は今年のコンペ作品の中でも一番です。
『ぼくの桃色の夢』
製作国:中国
監督:ハオ・ジエ
出演:バオ・ベイアル、スン・イー、ワン・ポン
1985年、全寮制の中学校生活がスタートした少年は、美少女に一目惚れする。長年に及ぶ少女への想いを軸に、意外な展開を見せる少年の半生が綴られていく。コミカルな描写も交えながら、青年の思考の旅をリリカルに語るハオ・ジエ監督は、本作が長編4作目となる中国の若手代表格。
【矢田部氏のここに注目!】
主人公は大学生になっても初恋の女の子を思い続けているんですが、映画と出会ったことから意外な展開に向かいます。彼が彼女に対する思いにどう決着をつけるのか? そのケジメのつけ方が鮮やかに描かれます。
『スナップ』
製作国:タイ
監督:コンデート・ジャトゥランラッサミー
出演:トーニー・ラークケーン、ワラントーン・パオニン
卒業して8年。ヒロインは母校で行われる同級生の結婚式に出席すべく故郷に帰る。そこにはカメラマンになった初恋の相手の姿も。二人で数えた池の魚。思い出のベンチ。上書きされてなかった恋の痛みに婚約者がいながら動揺してしまう女性の姿を、スタイリッシュな画面で綴る美しい青春映画。
【矢田部氏のここに注目!】
誰もが共感できる初恋の心の揺れが描かれていて、ただ美しく切ないだけの青春映画ではなく、タイ社会の不穏な空気も映画に深みを与えています。それに、ヒロインがめちゃくちゃかわいいです。
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