『ヴィジット』公開記念!シャマラン、カムバック!衝(笑)撃のサスペンス8選
今週のクローズアップ
別にシャマランでなくとも良かったのでは? と思わせるSFスペクタクル『アフター・アース』やファミリー向けファンタジー『エアベンダー』などで近年はすっかりラジー賞ノミネートの常連となったM・ナイト・シャマラン監督。でも、そもそも彼のトレードマークと言えば、『サイン』を筆頭に、「笑いと恐怖が混在する世界観」と「衝撃のラスト」。そんな彼が、初の海外ドラマ進出作「ウェイワード・パインズ 出口のない街」やスリラー『ヴィジット』で十八番のサスペンスに回帰! いい意味でも悪い意味でも大風呂敷を広げたシャマラン流サスペンス術を振り返ります!(構成・文:編集部 石井百合子)
『シックス・センス』(1999)
謎:なぜ少年の周りに幽霊が現れるのか?
小児精神科医マルコム(ブルース・ウィリス)に、誰にも語ることのなかった秘密を打ち明けた少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)。それは「死んだ人が見える」こと。彼いわく、「おなかの奥がぎゅっと締め付けられるような」「首筋がぞくっとする」「寒気がする」「腕の毛が逆立つような」感覚がしたときは、“彼ら”がいる証拠だという。コールの体には無数の傷があり、“彼ら”が「自分をいじめる」と訴えるコールだが、“彼ら”の目的は一体何なのか? ホラー作品でありながら、意外にも幽霊が登場するのは55分を過ぎてからというところにもシャマランのこだわりが感じられる。
ドッキリ映像:嘔吐する幽霊
マルコムの導きによって、“彼ら”の声に耳を傾ける決意をするコールだったが、早速彼の前に現れたのは苦しそうに何かを訴え掛ける少女の霊。幽霊というだけでも怖いのに、「嘔吐」って怖過ぎ……。それでも、恐る恐る「何か言いたいことがあるの?」と彼女の望みをかなえようとするコールがけなげだ。演じているのは、海外ドラマ「The OC」でブレイクする前のミーシャ・バートン。
衝撃のラスト:予測可能率10%
「どんでん返し」「衝撃のラスト」の代名詞になったほどの、予測不可能かつあまりにも悲しい結末。DVD(ブルーレイ)には冒頭、この作品にはある秘密があるため、映画をまだ観ていない人には明かさないでほしいという注意書きが。このラストを知ったうえで、コール、マルコム、彼らを見ているわれわれ、の3つの視点から作品を見返すとまた新たな発見があるはず。赤い風船、赤いドアノブ、赤いテント……など「赤」も重要な伏線。
『アンブレイカブル』(2000)
謎:主人公が不死身の肉体を持つ理由は?
列車衝突事故が発生し、乗員・乗客132人で唯一の生存者となったスタジアムの警備員デヴィッド(ブルース・ウィリス)。まもなく、「あなたは今までの人生で何日病気にかかりましたか?」という謎のメッセージが彼の元に届いたことから、デヴィッドは病気どころか風邪の覚えもないことに気付き不安に駆られる。やがてメッセージの送り主が判明し、漫画コレクター・ギャラリーのオーナー、イライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)を訪れる。彼は、デヴィッドとは対照的に生まれつき骨形成不全症という難病を患っており、ケガの絶えない人生に苦しんでいた。イライジャはデヴィッドを探し続けていたこと、そしてデヴィッドには使命があると告げる……。ストーリーが進み、デヴィッドがヒーローであることがわかってくるにつれ、ある時点からアメコミで使われているような原色を画面の中に取り入れているのだという。
ドッキリ映像:「一発だけでいいから!」と父に銃を向ける息子
160キロの重量上げに成功した父の超人ぶりにショックを受けた息子ジョセフ(スペンサー・トリート・クラーク)は、ついに父の不死身を証明すべく銃を向ける……。「一発だけでいいから!」とすごむジョセフと、「もしおまえの言う通り弾丸を跳ね返したとしても、そのあとすぐにこの家を出ていく。せっかくおまえと友達になれたと思ったのに!」とジョセフを戒めるデヴィッド。キッチンの狭い空間で繰り広げられる父と子の攻防戦は、ある意味ラストよりも衝撃的。本作には、1テイクで撮ったシーンが30か所以上あるそうで、ブルースいわく「失敗が許されないから現場はひどく緊張した」らしい。
衝撃のラスト:予測可能率5%
印象の強烈さで言えば『シックス・センス』の方が上かもしれないが、予測のつかなさではこちらが上。シャマラン監督は「テレビの『ミステリー・ゾーン』(1960年代にアメリカではやったオカルト番組)のような驚きの結末を狙ったのかもしれない。こういうラストを作ると、次の作品はどうかと常に取りざたされるだろうけど観客を驚かせるエンディングを作るのは楽しい経験」と満足している様子。
『サイン』(2002)
謎:トウモロコシ畑に刻まれた謎の暗号…“彼ら”の目的は?
ある朝、目覚めると元牧師のグラハム(メル・ギブソン)一家のトウモロコシ畑に巨大なミステリー・サークルが出現。2匹の飼い犬のうち1匹は長男モーガン(ロリー・カルキン)とその妹ボー(アビゲイル・ブレスリン)に襲い掛かり、もう1匹にも異変が。やがて、そのサークルが世界各地に現れていることが明らかになっていく。ある説によると「それは、UFOを誘導するためのサイン」というが……。自分の作品にカメオ出演することの多いシャマランが、居眠り運転でグラハムの妻を死なせてしまう獣医役で出演。グラハムに「やつらにも弱点がある」と伝えるなど重要な役割を担っている。
ドッキリ映像:ニュース映像で映される宇宙人
世界各地でのUFOの飛来や宇宙人の目撃情報がニュースで報道される中、スペインで少年の誕生日パーティーが行われた際に偶然、宇宙人の姿が捉えられたという。番組のキャスターが「警告しますが衝撃的です」と深刻な面持ちで注意を促した直後、緑、グレーのような「明らかに人ではない」生物が一瞬、カメラを横切る。パニックに陥る子供たちの絶叫も相まって、心拍数は急上昇! のちに、“彼ら”は風景と同化する皮膚、毒素を分泌する性質を持っていることがわかる。
衝撃のラスト:予測可能率0%
公開当時、大いに話題になった、グラハムの亡き妻が遺した言葉「見て」「打って」の意味が明かされるラスト。一家の危機に、この言葉が思いがけない効果をもたらす仕掛けになっている。幼いころから水に敏感で家中に水の入ったコップを置く妹、ぜんそくを患う長男……。「そんなバカな……」とツッコミを入れたくなる人もいると思うが、全編に張り巡らされた伏線が一気に回収されていくさまは痛快&爽快だ。宇宙人襲来という壮大なテーマを扱いながら、ほとんどの出来事がこの家屋で起きるという設定が、作品に圧倒的リアリティーをもたらしている。