『葛城事件』若葉竜也【第100回:イケメン調査隊】
イケメン発掘調査隊
殺人鬼に果敢に挑戦する、若手俳優界の異端児!
インタビュー INTERVIEW
Q:とても衝撃的な作品ですが、もともとはチケットが入手困難と言われるほど人気劇団THE SHAMPOO HATの同名舞台の映画化ですね。
そうなんです。舞台版の「葛城事件」を見たくて並んだのですが、結局見れなかったんです。でも、同劇団の「風の吹く夢」は見ていて、そのとき、(劇団の作・演出・出演を担当する)赤堀(雅秋)監督に挨拶させていただいたことがあって。そのときは「あ、どうも」ぐらいで、僕に全く興味を持たれていないと思ったんです。だから「葛城事件」が映画化されると聞いて、これは絶対出なきゃと思っていました。
Q:じゃあ、クランクインの日は気合いを入れて行ったんですか?
はい。でも気合いが入り過ぎて、もうガチガチに緊張しちゃって。テストをやるんですけど、全くダメで、(兄・保役、舞台版の「葛城事件」では稔役を演じた)新井浩文さんに「ちょっと硬すぎるんじゃないの?」と言われて、あんまり気張ってもダメなんだなと思いました。
Q:演じられた稔という少年は、出来のいい長男と対照的でバイトをやっても長続きせず、そのうち引きこもりになって、最終的に連続殺人へと突っ走ってしまうという役どころでした。難役だったと思いますが、どのように役づくりをしたのでしょうか?
赤堀監督と、「稔をただのモンスターにしてはダメだ」という話はしていました。普通の少年が殺人を犯すようになるまでどういうことがあったのか。どう演じたらいいのか、迷うことばかりで……。結局は監督を信じて、僕は無になって、葛城稔としてそこにいることだけを考えました。葛城稔として何かをしゃべる。誰かの話を聞くということに徹しました。
Q:演じてみて、ここは一番しんどかったというシーンは?
全カットですね。本当に1シーン1シーン、きつかったです。中でも体力的にきつかったのは殺傷のシーンでしたね。ナイフを振り回して、何回も何回も人を襲って、走り回る。撮影用のナイフなので本当は軽いんですけど、役者さんたちも本気で抵抗してくるので、こちらも力まかせに刺すというシーンを何度も演じるわけです。それが、演技でこんなにしんどいならば、現実にやったら、たぶん尋常ではないんだろうなと思いました。現場では「このカットはここからでいいですよ」と言われたのですが、リアルに稔を演じるためにも、「その前(カメラに映る前)からやった方が絶対にいいです」と言って。無理を言ってやらせてもらいました。体力的にはそこが一番きつかったですね。
Q:家庭を崩壊させ、息子をモンスターに変えてしまう父親を演じている三浦友和さんとの共演はいかがでしたか?
三浦さんとは10代の終わりごろに一度、幸せな家庭の親子役で共演したことがあったんです。今回のキャラクターとは全く真逆だったんですよ。本当に不思議でした。久々の再会でしたが、三浦さんがすごく穏やかに接してくださったんです。夜のシーンがあるんですが、暗闇から始まるので照明も落として、撮影が始まるまでの間、三浦さんが僕に「どこに住んでいるか?」って聞いてくれて。すごく他愛もない話だったんですが、ずっと不安定な状態でいた現場だったので、それがとても癒やしになって、すごく楽しかったです。
Q:出来上がった作品はご覧になりましたか?
試写を観たんですけど、自分が出演するシーンが近くなるとドキドキしちゃって。もうちゃんと観られなくて。役者なんだから、もっとドーンと構えて観ていればいい、と頭のどこかで思っているんですが(笑)、根が臆病者なので、周りの反応が気になってしまって。全然観ていられなくて、終わった後も赤堀監督とうまく話せずに、そそくさと逃げるように帰っちゃったんです。映画が公開されたら、改めて一人で観に行きます(笑)。
一問一答 PRIVATE
Q:大衆演劇の一座に生まれて、物心つく頃から役者になると考えていたのですか?
いや、役者以外の道しか考えてなかったです。本当に、役者は大っ嫌いでした。たぶん父親が稽古中に見せる顔とかが嫌いだったんだと思います。怖いし、小さい頃は何でそこまで怒るんだろうとわからないことも多くて。それこそ、木刀を持って追っかけられて、そんなことが積もり積もって嫌いになったんだと思います。1歳3か月で初舞台を踏んで、15、16歳まで大衆演劇に出ていましたけど、自分の意志で出たいと思ったことはないですね。怒られるから出る。そういう環境でした。
Q:現在、役者を続けているのは?
嫌いと言いながらも、心のどこかでは好きなんでしょうね。10代の終わりごろに、少し仕事を休んで、本当に自分がやりたいことを決めようと思ったんです。いろいろなバイトをしたり、人に会いに行ったり。でも、真摯(しんし)に向き合えるものがなくて、やっぱり自分には役者なんだなと気付いたときにはショックでした。20、21歳のときですね。でも、それで一生懸命やろうと自分で初めて思いました。
Q:オフのときは、何をしていますか?
ラーメンが好きだから、食べに行ったり、何人かと集まると、トンコツから作ったりしてます。でもやっぱりあんまり美味しくないから、プロってすごいなと(笑)。それ以外は、ゲームをしている。本当に、びっくりするぐらい普通のことしかしてないです。
Q:仲が良いのは?
菅田(将暉)とか太賀とは定期的に会っています。でも、芝居の話をするのではなくてコーヒーを飲んだりしながら、「最近、オススメのラーメン屋ある?」とか普通のことです。
Q:映画も撮っていますよね?
知り合いの劇団から、「インターネットで流すようなモノを撮ってくれないか」と頼まれたことがあります。今は僕が昔バイトをしていたお店の人たちから地域の飲食店業界を活性化させたいということで、短編映画を撮ってくれないかと言われて、今プランを練っているところです。好きに撮っていいと言われているので、すごく楽しくて。
Q:好きな映画や、好きな監督は?
『アイデン&ティティ』。役者でもある田口トモロヲさんの映画なんですが、すごく影響を受けました。それから、廣木隆一監督とは一度がっつりやってみたいですね。
Q:好きな女の子のタイプは?
すっごく恥ずかしいですね。そうだな、僕はニュートラルな人がいいですね。「わたしはこうなのよ」と自己主張が強い人よりは、いろいろなことに影響を受けている人のほうがいいかな。たとえば、「みんなは髪が長いけど、わたしは短くしとくわ」という人よりも、「みんなが髪を長くしているなら、じゃあわたしも長くしようかな」と。ブレブレの子のほうが好きですね。ファッションも流行りに影響受けちゃうとか。そのほうが人間っぽくていいかなと思うんです。
Q:どんなデートをしますか?
んー、ラーメン屋デートですかね(笑)。
Q:恋愛すると、どうなるタイプですか?
恋愛しても変わらないと思いますけど、人並みに彼女に偏っていくんじゃないかな。友だちと遊んでいるよりも彼女と一緒にいる。いつもだったら仕事が終わってマネージャーとご飯を食べていたのが、帰るとか。そういう風になるんじゃないかと思います。
Q:恋愛のこと、聞かれるのは苦手ですか?
めちゃくちゃ苦手ですね。もう汗が……汗が……(苦笑)。
Q:自分を動物にたとえるとしたら。
犬っぽいと言われますね。顔が似ているんじゃないかな。
Q:明日休みなら、何をしたい?
今やっているゲームを進めたいですね。仕事が入っているときは無理ですけど、休みのときはなら一日ゲームをやっています。オーザックを食べながら(笑)。
Q:どんな俳優を目指しますか?
俳優としてというよりは、オーディションで手に入れた役、オファーいただいたものは、今の自分ができる限りのことは一生懸命やる。最善のことはやりたいと思っています。それは役者が好き、ドラマが好き、映画が好きということもありますけど、何よりも仕事だから、ちゃんとやらなきゃなって思っています。
映画『葛城事件』は6月18日より新宿バルト9ほか全国公開
取材・文:前田かおり 写真:奥山智明
ヘアメイク:HAMA スタイリスト:有本祐輔(7回の裏)