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ここに来れば何でも揃う、まさに名画の百貨店! - 高田馬場・早稲田松竹 ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

ラジカル鈴木の味わい名画座探訪記

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 リーズナボーでボリューミーな飲食店がひしめく、学生を中心に栄える若者の街・高田馬場。実は遡ること40年前の小学生の時、憧れの手塚治虫先生のスタジオを訪ねたことがあります。残念ながらお会い出来なかったけど、スタッフの方々に親切に仕事場を見せて頂きました。あれ以来、僕にとって文化の象徴のような場所。もちろん、いくつかあった名画座もその要素を形成しています。

■今月の名画座「早稲田松竹」

 駅から徒歩5分、賑やかな早稲田通りに忽然とレトロモダーンな姿が。こちらのオシャレポイントは、何と言ってもこのキュートな建物。戦後間もない頃の建造物が残っているのは、まさに奇跡。1951年松竹系列の封切館として創業、1975年より旧作2本立ての名画座に。今、内部は奇麗に改装され、1990年代に通っていたときとはまるで違って、最新のシアターなのに驚く。 据え置きの料金、入れ替えナシ、外出OK等のシステムはそのまま変わらず、2002年のリニューアルオープン時にスタッフはほぼ入替り、新たに再スタートを切る。2006年には座席をゆったりしたものに変え、30席減らして間隔を広く取り、長時間の鑑賞も快適に。

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■早稲田松竹のここがツボ:反映率高しのリクエストカード!

 『2001年宇宙の旅』『ゴッドファーザー』『タクシードライバー』『アメリカン・グラフィティ』『シェルブールの雨傘』『ベニスに死す』『暗殺の森』『未来世紀ブラジル』『ラストエンペラー』ゆきゆきて、神軍』……キラ星のごとき名作ばかり観てきました。近年は更に充実、洋画邦画・新旧・硬軟と、まあ、よくもここまで映画ファンの心を掴むラインナップを絶妙なバランスでやるなあ!  ここに来れば何でも観られる、まさに名画の百貨店!!

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大好きな映画の上映を希望できる! リクエストボード&アンケート

 ロビーにあるアンケート用紙と、書いてボードに添付するリクエストカードから、希望する作品の上映を検討してもらえる。僕が書いた大好きな『ファイブ・イージー・ピーセス』を本当に上映してくれた!  2015年には、もう映画館で観られないと思っていた『時計じかけのオレンジ』『博士の異常な愛情』と永遠の鉄板最強2本立てで上映してくれて、一生付いていく! と思いました(笑) ついでに、いつもリクエストしてるウディ・アレン『カメレオンマン』『スターダスト・メモリー』も是非宜しくお願いします(笑)。

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■自分の想う名画座に

 リニューアル時、熱い想いで入社した現・副支配人の平野大介さんにお話をうかがう。

 「名画をかけてこその名画座ですからね。このGWの『早稲田松竹クラシックスvol.123 戦後アメリカ映画の金字塔』(『地獄の黙示録』と『イージー・ライダ-』)は、若い方から年輩の方まで幅広くいらしていただき満員御礼でした。ウチらしいプログラムだと思います」。劇場でこそ観たい王道の2本、たまりません! 取材時は、今年沖縄返還45周年を迎えることから「早稲田松竹クラシックスvol.124  沖縄返還から45年、映画の中の沖縄」を上映中だった。

 選定は平野さん含めスタッフ3人で行っている。特に印象に残っているプログラムは、テリー・ギリアム監督の作品『12モンキーズ』と、原案の短編映画『ラ・ジュテ』、そして同監督の暗礁に乗り上げた作品の制作日誌『ロスト・イン・ラマンチャ』の3本上映で、気合いの入ったギリアムファンが大勢詰めかけたそうだ。

 また近年、一番力を入れているのが「ミッドナイト・イン・早稲田松竹」という3年前から始めたオールナイト上映。特集によって全く違うお客様が来るけど、毎回盛況で、かなり定着してきた感がある、とのこと。

■あの有名監督も来た!仰天エピソードの数々

 映画制作側の監督やスタッフ、役者さんからも絶大な人気と信頼があり、トークショウはもちろん、お忍びで誰それが来ていた等、逸話は枚挙に暇がない。

 作品の殆どは配給会社から借りるが、塚本晋也監督、石井岳龍(聡互)監督の作品など、監督自身が権利を持っていて直接借りたケースも。塚本監督は丁度『沈黙-サイレンス-』のプロモーション中で忙しい時期に、事前に上映の音量チェックしに来たのだそうだ。流石こだわりの人。

 平野さん自身がビビったのは、阪本順治監督が訪れたとき。「再オープンして間もない頃、阪本監督の『この世の外へ クラブ進駐軍』と『亡国のイージス』の2本を上映中、入口でモギリをしていたら、ご本人がチケットを買っていらっしゃって! 慌てて『お金は頂けません!』と言ったけど、『いやいや』と払ったまま鑑賞されて。その後、『魂萌え!』の撮影の時、客席と映写室をロケに使用されましてた」。

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■熱い映画ファンが運営

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『イージー・ライダ-』ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、ジャック・ニコルソン

 平野さんは1974生まれ、20才のとき某映画館でアルバイトを経験。一般企業に就職したのち、リニューアルオープンのときに28才でバイト入りし、現在の副支配人に至る。スタッフは支配人と副支配人の2名、アルバイトが9人の計11名。皆映画に精通する凄腕揃い

 平野さんいわく「上映するのは個人的に好きなものとは全く違い、好みは消して選んでます。自分の世代はバブルで景気が良いときに一番映画を観ていて、北野武さんや、異業種監督の全盛でした。香港映画が好きで、ずっと注目していたドニ-・イェン(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『トリプルX:再起動』)の近年の活躍は嬉しいです(笑)」。

 名画について聞くと「100分の上映時間中、1カット、1秒でもシビれる場面があれば、名画だと思うんです、そういう意味では全ての映画は名画です(笑)。それで観た価値は十分あると思う。ある作品がネットで酷評されているのを読んだりしますが、何でソコが解らないのかなあ? と思うときがあります」と心底映画を愛しているお言葉。

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■これからの名画座は、間口を広く

 かつて自分がお客だった身として、料金の安さは絶対欠かせないと平野さんは言う。「出来る限りこのまま頑張りたいのですが、今度の増税でどうなるかわらないので、学生さんも今のうちに来て頂けたら」とのこと。

 今後の名画座に必要なことは? 「数が少なくなったぶん、間口を広げなきゃいけないと思っています。新旧出来るだけ多彩な作品をかけて、幅広い方々にアピールすること。5週あれば5か国の作品を週ごとに変えて上映する、ぐらいの気持ちです」

 なるほど、近年の怒濤の充実ぶりは、このポリシーが貫かれているのだ! さりげなく『ベニスに死す』とか『神々の深き欲望』なんて、鳴り物入りで封切館で“最新技術のデジタルリマスター”って単品上映されてもおかしくないのを普通にかけちゃったり、どういう事情からかプログラムが3日単位で変わっちゃう時もあるが、上映したい作品がめじろ押しなのだろう。

 学生のみならず近年は外国人の多い街に変化した高田馬場。一番多いのはアジア、中東の人だが、例えば韓国映画特集をやれば韓国の人、東南アジア映画なら東南アジアの人、小津安二郎小栗康平監督特集の時はヨーロッパから人が訪れるという。

 「名画を上映して、劇場がお客さんでいっぱいになったとき、まだまだ映画も捨てたもんじゃないと思います、映画館で観たい人はこんなに多いんだ、と」。そうおっしゃる平野さんは、今でもモギリに入り口に立ち、上映終了後は帰るお客様一人一人に声をかける

 お客さんを大事にし、地域に愛され、バックアップされているからこそ永きに渡り存続しているのだ、そんな当り前のことを考えながら、40年前と変わらない駅までの雑踏を帰りました。

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■映画館情報

早稲田松竹 住所:東京都新宿区高田馬場1-5-16 TEL:03-3200-8968
座席:153席/音響:DS・SR・SRD
公式サイト
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ラジカル鈴木 プロフィール

イラストレーター。映画好きが高じて、絵つきのコラム執筆を複数媒体で続けている。

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