なぜハイジは好かれるのか?ウーマンラッシュアワーが激論
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は村本の心もすっかり洗われた! 『ハイジ アルプスの物語』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
アニメで有名なあのシーンに大満足
村本:実はね、最初は「日本でアニメの実写化が流行ってるから公開するんちゃう?」って、ちょっとイヤな目で観てたのよ。でも、観たらまるでアルプスに行ったかのように爽快で、めっちゃ優しい気持ちになれる映画やった!
中川:アニメのええところをギュッと映画にした感じで、「ハイジ」の良さがしっかりと伝わってきたな!
村本:アニメで有名なパンとチーズの描写も期待を裏切らない出来栄え!
中川:トロトロのチーズをパンにのっけて……。
村本:あのとろけるチーズが実写化できるとは……。アニメ以上に「うわ、食いてぇ」ってなったもん。ハイジ役の娘(アヌーク・シュテフェン)もすごくかわいくて。日本で実写化するときは、ぜひはるかぜさん(春名風花)にやってほしい!
中川:はるかぜちゃんなんや? でも、大人になった時が楽しみな顔しとるよな。クララ役の娘(イザベル・オットマン)もかわいかったし。ちょっと眉毛なかったけど。
村本:こういう物語って、クララが最初はイヤな奴で徐々に性格が良くなっていくっていうパターンがお決まりだったりするけど、クララも寂しくて友達がほしいっていう、嫌味のない娘だったのもええよな。でもクララ役の女優はなかなか気が強そうやね。
中川:何か引っかかるの?
村本:映画の中のクララだって、ハイジがおらんかったら性格悪くなってたかもわからんで。悪い遊びにハマって。
中川:一気にオトナの話になったな……。
村本:金髪をブワーって立ち上げて、激しめの音楽聴くようになったりして。
中川:車いすの不良少女みたいな。
村本:ハイジが心のよりどころになってくれて良かったわ。
ハイジのここがスゴい
村本:ハイジの何がすごいって、おばさんに捨てられてアルムおんじ(ブルーノ・ガンツ)に引き取られて今度は(おばさんから)クララの家に行けって、たらい回しにされるのに、最終的にみんなが「俺(わたし)のハイジだ」って求めるようになる。みんなハイジ中毒になってまうところやな。
中川:ピュアな心がこんなにも周りの人を幸せにするんやってことを、あらためて感じさせられるわ。
村本:やっぱり一方の立場に立たないスイスで生まれた話なだけある! ハイジはスイスの擬人化や!
中川:永世中立国のような女の子!
村本:でも、もしかしたら最初は心が痛くなる人がおるかもわからんなぁ。
中川:つらい現実を突きつけられるみたいな?
村本:現実っていうか、山でピュアに生きているハイジやおんじを、ふもとの村のヤツらが嘲笑うやん? 自分もああやって大爆笑しているヤツらの側じゃないのか? って思うかもわからん。
中川:なるほどなぁ。
村本:周りの空気に支配されないで生きてる人のことを、うらやましいと思っているから笑うのよ。誰かを自分より下って決めつけてたたいて、自分は誰かより上なんやって気持ちを保っている一番かわいそうな人たち。
中川:「大人の理論」で言い訳をする人たちみたいな。
村本:そうそう! 俺たちは我慢してやっているんだ、こうしなきゃいけなんだよって言うてな。でも、都会にいてもおばあさまみたいに(寛大、オープンに)なれる人もいる。この映画を観たら、みんなハイジやおんじになれるってことがわかるはず!
中川:優しい気持ちになるよな。
村本:だからこそ、子供だけじゃなく現代のサラリーマンたちも観るべき! これは疲れた大人にとって光明やで! 人生を見つめ直すって意味では『ちょっと今から仕事やめてくる』にメッセージ性が似ているかもわからん。
ホラーなおじいさんの優しさに感激
村本:ハイジを引き取るアルムおんじも素晴らしかった!
中川:最初に出てきたときはデカい鎌を振り回して、ホラー映画かってくらい怖かったけど。
村本:あの、目が見えないオヤジの映画を思い出してゾっとしたわ!
中川:『ドント・ブリーズ』のオヤジな! そんなおんじもハイジにはデレたな。再会したときなんか、がーって顔擦りつけて。
村本:ペーターが悪さして「こらしめるか」って言うたときも、ハイジとクララの仲に嫉妬しただけってわかってるから、ただ怒るんじゃなくて当事者の子供たちだけで話せって言うてな。
中川:あの収め方、素晴らしかったわ~。
村本:ホンマ、名奉行やで。人の心がしっかりとわかってる人だからできることや。
中川:クララのおばあさまも良い人やったな~。勉強に一生懸命になれんハイジに絵本を読んであげて「この先は自分で読むのよ」って。好きなことで伸ばしてあげようっていう精神。うちの子もまだ字が読まれへんから参考になったわ! 読み書きを教えても、興味がないからすぐあきらめてまうのよ。でも、興味のある本を買って、読みたいっていう気持ちにさせたらええんちゃうかなって思ったわ。
村本:おばあさまを、おんじがちょっと誘惑するところもおもろかったな。山を訪ねて来たとき、強そうな酒飲まして。
中川:あのシーンってそういう意味だったんや……。
これだけは言いたい!ななめ見ポイント
村本:あとな、俺はクララについてちょっとパラダイスに考えてほしいと思ったことがあるのよ。
中川:何やの急に。
村本:俺はクララが歩けなくなった原因って、お母さんが亡くなったことじゃなくて、お父さんだと思うのよ。娘が一番寂しいときに、お金のために働きに行ってばかりでクララを一人きりにして。
中川:なるほどね。お金のある生活をさせるのか愛情を注ぐのか。
村本:家が多少貧しくても、子供と一緒にいることが大事なのか。そういう親に対しての問題提起にもなっていると思うのよ。俺はお父さんがクララのためにしていることが、どんどん負のスパイラルになっているように見えてしまって。
中川:でも実際、僕もお父さんみたくなってまうと思うわ。「何不自由なく暮らしているんやからええやん」って。寂しさに気付けてあげられないかもわからん。
村本:子供って我慢しとるんやなって感じた。おまえの子供もさ、お父さんお母さんずっと家にいてほしいと思っても言い出せんと思うで。ハイジかて、山に帰りたいのにクララのために我慢して夢遊病にまでなって。
中川:まあ言うたら、子供が本質的にどう思っているじゃなく、結局は大人の考えだけになってしまうよな。子供の気持ちよりも何不自由なくさせてあげたいっていう発想に、僕はどうしてもなってしまう。
村本:でもな、今、シリアとか紛争地域では教育を受けられない子供っがいっぱいおるんやって。日本でも、外国から働きにきたお母さんが日本人と結婚するんやけど逃げられて、日本語教えられないから、その子供は授業もわからないまま、学校の教室に座っているっていうことが結構あるって聞いて。そうやって子供って我慢している。山に住んでいるときにハイジが言うてたやんか。目が見えなくて硬い物を食べられないおばあさんに会って、おんじに「わたしたちって幸せなんだね」って。ああいうことを、俺は現代の日本の大人に実感してほしい。今の日本にはハイジが必要。あなたの心にハイジはいますか? ってみんなに聞きたい!
今月の激オシ映画はコレ!
世界中で愛されている児童文学「アルプスの少女ハイジ」の舞台となったスイスが、新たに21世紀版ハイジとして生み出した人間ドラマ。アルプスの山の中で暮らしていた少女が、慣れない都会での生活に必死になじもうと奮闘する姿を描写する。ヒロインをアヌーク・シュテフェン、祖父を『ヒトラー ~最期の12日間~』などのブルーノ・ガンツが好演。
(C) 2015 Zodiac Pictures Ltd / Claussen+Putz Filmproduktion GmbH / Studiocanal Film GmbH
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。「AbemaNews」チャンネルのニュース番組「AbemaPrime」(毎週月~金曜日21:00~23:00生放送)にて月曜レギュラー出演。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。