スクープだけじゃない、社会的通念を打ち破った女性経営者と仲間との結束の物語でもある!『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2/2)
第90回アカデミー賞
もう一つのテーマは「パートナーシップ」。「ペンタゴン・ペーパーズ」が政府の弾圧に屈することなく世に広く認知されるためには、キャサリンと編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)の信頼関係、記者たちの結束、そして「報道の自由」を守り抜くために競合する媒体が心を一つにして、国家権力に立ち向かう必要があった。こうした連帯は、セクハラ騒動が収まる気配のない今のハリウッドでも重要視されている課題だ。権力に日和って疑心暗鬼になるのではなく、よき社会、健全な社会のあるべき姿を取り戻すためには、信頼と連携が必須であることをわかりやすく伝える本作の展開は、事件のディテールよりも、この非常に今時の正しいメッセージに重きを置いた作品であることがよくわかる。
時の大統領、ニクソンの数々の妨害工作や横暴を、現大統領のトランプに重ね合わせる描写もわかりやすい。この前段があって、『大統領の陰謀』(1976)に続くのか! と思わせる幕切れも、映画ファン的には楽しいものだ。一方で、前向きで明快なメッセージと理想主義的な作風は、今のハリウッドでは評価が分かれるところかもしれない。
もう一つ、本作で今時だなと思わされたのは主演2人以外の脇を固めるキャスティング。サラ・ポールソン、ボブ・オデンカーク、トレイシー・レッツ、ブラッドリー・ウィットフォード、マシュー・リス、ブルース・グリーンウッド、アリソン・ブリー、キャリー・クーンらは、いずれも非常に高い評価を得ている秀作テレビシリーズでよく知られている面々。もちろん舞台や映画でも活躍しているが、渋めながらも芸達者な俳優陣が演じる、味わい深い個々のキャラクターの物語を長尺のドラマで掘り下げることができたら、なんと贅沢なことだろうかと想像せずにはいられない。
メリル・ストリープ×トム・ハンクス×スティーヴン・スピルバーグ監督!映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』本予告編