厳選!ファッション・ドキュメンタリー・セレクション
第31回東京国際映画祭
東京国際映画祭では、今年もWOWOW「映画工房」とのコラボ企画を実施。現在のファッション界を牽引するクリエイターたちの想いが伝わるドキュメンタリー4作をオールナイトで上映します。上映前にはVOGUEのファッションディレクターをゲストに迎えてのトークショーも。イベントをより楽しむために見どころをチェックしておきましょう。(文:此花さくや/編集部 浅野麗)
『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』
最高の自分を演出する、美しく強い女性のシンボル
スペイン生まれのデザイナー、マノロ・ブラニクの靴は、外見の美しさ以上に素晴らしい履き心地が「靴の王様」と称される所以。実は、大学では政治や法律を学び、完全な独学で靴作りをマスターしたのだとか! 本作は、そんな彼の生い立ちから、ストイックな職人気質やチャーミングな素顔まで、あらゆる角度でマノロの魅力を紹介。背が高いのを気にして普段はローヒールやフラットしか履かなかった故ダイアナ元妃が、チャールズ皇太子がカミラ夫人との不倫を公に告白した日に、“リベンジ”として、最高の自分を演出するために履いたのがマノロのハイヒール。ヒールを履いても走れるマノロの靴は、“美しく強い女性のシンボル”なのです。
『メットガラ ドレスをまとった美術館』
世界一招待されることが難しいパーティーの裏側
「ファッションのアカデミー賞」と呼ばれるメットガラは、メトロポリタン美術館の服飾部門が毎年開催する展覧会のオープニングパーティー。テーブル席料はなんと3,000万円以上! 米VOGUE編集長でパーティーの責任者でもある、アナ・ウィンターのお眼鏡に適う人しか招待されないことから、世界一呼ばれるのが難しいパーティーとも言われています。本作では、芸術監督を務めたウォン・カーウァイ、企画展のキュレーター、アンドリュー・ボルトンとアナが議論を戦わせながら、2015年のメットガラを創り上げていく全貌が明らかに。「ファッションは芸術なのか?」カール・ラガーフェルドやジョン・ガリアーノなど重鎮が語るファッション論も必見です。
『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
独立デザイナーならではのこだわりと冒険、そして葛藤
ベルギー出身のデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンは、1990年代にファッション界のトレンドだった「ミニマリズム(装飾を省いたシンプルなデザイン)」とは真逆の、刺繍が美しいファブリックを用いた「フォークロア」を打ち出し、トップデザイナーの座に輝きました。多くの高級ブランドが大企業グループの傘下に入る中、ノッテンは自己資金で活動する、数少ない独立したデザイナー。それは、なぜなのか? 本作は、アントワープの郊外の邸宅で花を育てるノッテンの素顔、コレクションの舞台裏で見せる葛藤、独立したデザイナーだからこそ可能な創作の冒険……リアルクローズへのこだわりを通して、その秘密に迫ります。
『クリスチャン・ディオール華麗なるモードの帝国』
最新モードを創り続ける歴代デザイナーの軌跡と今
戦時中、機能性ばかりが重視され味気なかった女性の服に、1947年、ニュー・ルック革命を起こしたクリスチャン・ディオール。女性性を強調した優美なシルエットは、戦争で傷ついた女性達に夢と希望を与えました。彼の亡き後、イヴ・サン・ローランやジョン・ガリアーノなど、名だたるデザイナーが次々とクリエイティブ・ディレクターに就任。オートクチュールの顧客層が激変する中、最新モードを創るデザイナーを獲得することがメゾンの最重要課題なのです。本作は歴代デザイナーの足跡と職人の技、メゾン初の女性クリエイティブ・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリのデビューコレクションに密着。キウリが目指す現代のニュー・ルックとは……。
既成概念を壊して時代を拓きながら、伝統や職人技術を後世に伝えるのが真のファッション。一枚の服、一足の靴にかけるデザイナーと職人の技、時間、情熱が芸術へと昇華するーー。その瞬間が目撃できる必見のドキュメンタリー4作が堪能できます。
「ファッション・ドキュメンタリー・セレクション」 in 東京国際映画祭
斎藤工と板谷由夏、映画解説者の中井圭が、WOWOWで放送する映画の魅力を語りつくす映画情報番組「映画工房」。第31回東京国際映画祭では、コラボ企画としてファッションドキュメンタリー4作をオールナイト上映。上映前には、番組出演者と、『VOGUE JAPAN』ファッション・ディレクターの増田さをり氏との、トークショーを公開収録します。
開催日時:10/26(金)20:30 開場/21:00 スタート
場所:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
登壇者:斎藤工
板谷由夏
中井圭(映画解説者)
増田さをり(『VOGUE JAPAN』ファッション・ディレクター)