第72回カンヌ国際映画祭(2019年)コンペティション部門21作品紹介
第72回カンヌ国際映画祭
5月14~25日(現地時間)に開催される第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門21作品を紹介(コンペティション外を除く)。今年の審査委員長は、映画『レヴェナント:蘇えりし者』などのメキシコ人監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。ジム・ジャームッシュにペドロ・アルモドバル、ケン・ローチにテレンス・マリック、そしてポン・ジュノ、グザヴィエ・ドランと、カンヌ好みの監督が揃いまくった今回だけに、混戦が予想されそう。さらに、ブラピ×ディカプリオのタランティーノ監督最新作が滑り込みエントリー! 栄えあるパルムドールの行方はいかに!?(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香/編集部 浅野麗)
<パルムドール(最高賞)>『パラサイト(英題) / Parasite』
製作国:韓国
監督:ポン・ジュノ
キャスト:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン
【ストーリー】 家族の誰も仕事をしていないギテク一家だが、あるとき長男が家庭教師として面接を受けることになる。長男は期待を胸にパク社長の豪邸を訪れ、贅沢な暮らしぶりを目の当たりにするも、予期せぬ出来事に巻き込まれていく。
【ここに注目】 ポン・ジュノ監督の新作は、全員失業中の家族と富豪一家の物語が交錯する異色ファミリードラマ。『殺人の追憶』『グエムル -漢江の怪物-』『スノーピアサー』に続き、ポン監督とは4度目のタッグとなる、韓国の名優ソン・ガンホが主演し、イ・ソンギュン、チェ・ウシクらと共演する。近年ハリウッドで活躍しているポン監督にとって、おおよそ10年ぶりの韓国映画となる。
<グランプリ>『アトランティック(英題) / Atlantics』
製作国:フランス、セネガル
監督:マティ・ディオプ
キャスト:ママ・ビネタ・サネ、アマドゥ・アム
【ストーリー】 セネガルの首都ダカール郊外の町。高層ビルの建設現場で働く労働者の1人、スレイマンは数か月前から給料がもらえず、仲間たちと小さな船で国を出る。彼にはアダという恋人がいたが、彼女には親が決めた婚約者がいた。数日後に行われたアダの結婚式では火事が起き、近くに住む娘たちが謎の熱病に襲われる。アダはスレイマンが戻ってきたことをまだ知らない。
【ここに注目】 クレール・ドゥニ監督の作品などにも出演するフランス出身の女優で、セネガルの巨匠ジブリル・ディオプ・マンベティ監督を叔父にもつマティ・ディオップ監督。『千の太陽』などの中・短編映画で国際的に評価され、初の長編作品となる本作でカンヌ国際映画祭コンペティション部門に見事にノミネートを果たした。カンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモーは、本作を「ロマンティックで政治的」と高く評価している。
<審査員賞>『レ・ミゼラブル(原題) / Les Miserables』
製作国:フランス
監督:ラジ・リ
キャスト:ジャンヌ・バリバール、ダミアン・ボナール
【ストーリー】 シェルブールからモンフェルメイユにやって来たばかりのステファンは、警察の防犯係・BACに入り、経験豊富なクリスとグワダとチームを組む。そして、界隈の不良グループのいざこざの捜査に追われるが……。
【ここに注目】 フランスのアカデミー賞に相当するセザール賞で、2018年の短編映画賞にノミネートされた作品を翻案し、長編として製作した犯罪バイオレンス。監督は、映像作家集団「Kourtrajme」に参加し、短編やドキュメンタリーを手掛けてきたラジ・リ。本作が長編劇映画デビュー作となる。防犯係の刑事たちが体験する出来事や彼らの行動を、ドローンを駆使して追った映像も見どころ。
<審査員賞>『バクラウ(原題) / Bacurau』
製作国:ブラジル
監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ、ジュリアーノ・ドルネレス
キャスト:ウド・キア、ソニア・ブラガ
【ストーリー】 ブラジル奥地の町バクラウ。女家長の死後、彼らの町はなぜか地図から消え、次々と死体が発見されるようになる。
【ここに注目】 『アクエリアス』のクレベール・メンドンサ・フィリオと、プロデューサーとしても活躍するジュリアーノ・ドルネレスの共同監督&脚本で放つバイオレンスドラマ。『ニンフォマニアック Vol.2』などのベテラン俳優ウド・キアらを迎え、ブラジルが抱える問題をジャンル映画として描き出す。前作『アクエリアス』が本映画祭のコンペティション部門に選出された気鋭監督の、2度目の挑戦の行方はいかに。
<監督賞>ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ『ヤング・アーメッド(英題) / Young Ahmed』
製作国:ベルギー、フランス
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
キャスト:イディル・ベン・アディ、オリヴィエ・ボノー
【ストーリー】 ベルギー人の13歳の少年アーメッドの運命は、イスラム教指導者の理想に従うか、人生に導かれるままに進むか、どちらを選ぶかにかかっていた。
【ここに注目】 『ロゼッタ』と『ある子供』で2度のパルムドールを獲得したジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌの兄弟が、カンヌ国際映画祭コンペティション部門8回目のノミネート。現代のベルギーを舞台にした本作を「これは1人の子供に起きるあらゆるケースについての物語。言えることはそれだけ」と紹介しているダルデンヌ兄弟。得意の子供をテーマにした作品で3度目のパルムドームなるか。
<男優賞>アントニオ・バンデラス『ペイン・アンド・グローリー(英題) / Pain And Glory』
製作国:スペイン
監督:ペドロ・アルモドバル
キャスト:アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス
【ストーリー】 人生の盛りを過ぎた映画監督のサルバドール・マヨは、これまでの自分の人生に想いを馳せる。1960年代に両親と共に引っ越したバレンシアの町パテルナで体験した性の目覚め。そして本当の愛を知った1980年代のマドリッドの風景がよみがえる。
【ここに注目】 『オール・アバウト・マイ・マザー』でアカデミー賞外国語映画賞に輝いた、スペインを代表する巨匠アルモドバル監督最新作。自伝的作品である今作で、主人公の映画監督を演じるのは、初期の頃から何度もタッグを組んできたアントニオ・バンデラス。そして、今やスペインだけでなく、ハリウッドでも活躍するオスカー女優ペネロペ・クルスが豪華共演を果たす。アルモドバル監督自身の半生を重ね合わせた渾身の一作に期待が高まる。
<女優賞>エミリー・ビーチャム『リトル・ジョー(原題) / Little Joe』
製作国:オーストリア、イギリス、ドイツ
監督:ジェシカ・ハウスナー
キャスト:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー
【ストーリー】 シングルマザーのアリスが開発した深紅の花は、適温の中、栄養を与え話しかければ、所有者を幸せにする能力を宿していた。アリスはこの特殊な花をこっそり持ち帰り息子にプレゼントするが、これが危険を招くことになる。
【ここに注目】 奇跡の水をめぐるサスペンスを描いた『ルルドの泉で』のオーストリア人監督ジェシカ・ハウスナー。新作は、遺伝子操作された植物が増殖することで、人間たちに及ぼす影響を描いたSFドラマで、主人公アリスをエミリー・ビーチャムが演じる。共演はベン・ウィショー、リアン・ベスト、ケリー・フォックスら。成長するにつれ、そばにいる人々の生活を脅かしていくという奇妙な花の謎とは?