ITのピエロは魅惑のイケメン! ビル・スカルスガルドのあやしい魅力
世界興行収入約770億円(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル110円計算)を記録し、ホラー映画史上最もヒットした作品となった『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)で、観客に強烈な恐怖とトラウマを植えつけたピエロのペニーワイズ。その白塗りの不気味なビジュアルからは到底想像がつかないが、演じたのがイケメン俳優のビル・スカルスガルドだったという事実に驚かされた人は多いはずだ。ビルの子供の頃からの特技を生かしたという不気味な笑い方や、思わず吹き出してしまう奇妙なダンスなど、単に怖いだけでなく、ペニーワイズのなんとも言えないキュートさも映画が愛された理由のひとつだろう。11月1日に完結編となる『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が公開される今、ビル・スカルスガルドの魅力を改めて振り返ってみたい。 (文:松山梢)
10歳でデビュー!スカルスガルド家の4男
スウェーデンの芸能一家スカルスガルド家の4男であるビルは、現在28歳。
10歳の時に兄アレクサンダーと共演した『ホワイト・ウォーター・フューリー(原題) / White Water Fury』(2000)で長編映画デビューを果たし、映画『アーン 鋼の騎士団 Part2 愛と戦いの果てに』(2008)では父ステランと兄グスタフと共演。
2009年にストックホルムの名門校セードラ・ラテン・ギムナジウムを卒業し、大学進学はせずに父や兄と同じ俳優の道へ本格的に進んだ。
日本でその名を広く知られるようになったのは2014年に公開された『シンプル・シモン』(2010:日本での公開は2014年)。
気に入らないことがあると自分の世界に閉じこもって想像の宇宙へ飛び立ってしまう、アスペルガー症候群の青年シモンを好演。
恋人に振られてしまった大好きな兄のため、ちょっぴり変わった方法で恋人探しをするシモンの奮闘を、まだ少年の面差しが残る20歳のビルが最高にチャーミングに演じたファン垂涎の1本だ。
192cmの高身長に大きなグリーンの瞳が放つ存在感
一方、グッと大人の色気を増した演技を披露しているのが、2013年から主演を務めたNetflixオリジナルドラマ「ヘムロック・グローヴ」(2013~2015)。
ホラー界の新鋭イーライ・ロスが製作総指揮を務めた作品で、ウピールと呼ばれるヴァンパイアのローマンに扮した。グロテスクな描写が満載の物語の中で、ぎょろっと大きなグリーンの瞳と常に思い詰めたような表情で佇む192cmのビルは、ゾクゾクするような妖しい存在感を放っている。
性欲旺盛なキャラクターのため色っぽいシーンも多いけれど、シーズン1ではまだ自分がウピールであることに気づいていないという設定が、なんだかちょっぴり間が抜けていてチャーミングだ。
ハリウッド映画デビューを果たしたのは、ベロニカ・ロスによるベストセラー小説を映画化した『ダイバージェントFINAL』(2016)。
近未来のシカゴから脱出した主人公たちを助ける謎の組織、遺伝子繁栄推進局のマシューを演じた。キッチリ七三分けのヘアスタイルと穏やかな語り口はインテリジェンスを感じるが、果たして本当に主人公たちの味方なのか……。
「実は何か企んでいるはず!」と思わせる、やっぱり妖しげな存在感が、物語を巧みにミスリードしている。
インパクト大の演技で大注目
その後はハリウッド大作への出演が相次ぎ、シャーリズ・セロンがMI6の敏腕エージェント、ローレン・ブロートンを演じた『アトミック・ブロンド』(2017)では、ドイツ人協力者のメルケル役を熱演。
ピンチに陥るローレンを救う重要なキャラクターを担っており、バーテンダーからホテルマンまで様々な変装をする、ビルの変幻自在ぶりも楽しい。同じくデヴィッド・リーチ監督が手がけた『デッドプール2』(2018)では、ライアン・レイノルズ演じるデッドプールが結成したヒーローチーム“Xフォース”のメンバーに応募するツァイトガイスト役に。
彼が持っている特殊能力はなんと酸性のゲロを吐くこと。出演時間は短いけれど、そのバカバカしさと衝撃のラストはインパクト大だ。
シルクのような青白い肌と憂いを帯びた佇まい
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』と同じく、スティーヴン・キングの原作を映像化し、キングとJ・J・エイブラムスが製作総指揮を務めた「キャッスルロック」(2018)も、その完成度の高さが話題となっている人気ドラマ。
長年刑務所の檻に閉じ込められていた謎の青年を演じているが、邪悪な悪魔なのか純粋な天使なのかわからない、キャラクターの複雑な側面を体現する繊細なパフォーマンスはさすが。シルクのような青白い肌と憂いを帯びた佇まいという、ビルのおなじみの魅力を徹底的に味わうことができる。
こうして出演作を挙げてみるとパンチのある役柄がずらりと並ぶが、待望の新作『 IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』でも、美しいルックスを再び封印し、不気味さを2年分熟成発酵させたかのような進化したペニーワイズのビジュアルを披露している。
そろそろハンサムさを存分に生かした甘いラブストーリーも見てみたいけれど、190cmを超える抜群のスタイルと吸い込まれそうな大きな瞳、そしてピエロから繊細な青年まで演じ分ける俳優としての規格外のポテンシャルは、それを受け止めるだけの強烈な作品でこそ輝くのかもしれない。
父も兄弟も美形揃い!
ビルの活躍でさらに脚光を浴びているスカルスガルド家は、8人の兄弟のうち4人が俳優として活躍。しかも全員190cmオーバーのイケメン揃いという奇跡の家族だ。
父ステランは現在68歳で、キャリア50年を超える大ベテラン。『奇跡の海』(1996)や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)、『メランコリア』(2011)など、ラース・フォン・トリアー監督の常連として多くの作品に出演。
アニメ『ムーミン谷とウィンターワンダーランド』では製作総指揮を務め、ムーミンパパの声を担当。ビルがムーミンの声を演じたことで、親子共演が話題となった。
長男アレクサンダーは、個性的なビルよりも正統派のイケメンとして人気を誇る42歳。人間とヴァンパイアの愛を描いたドラマ「トゥルーブラッド」(2008~2014)のエリック役でブレイクし、『ターザン:REBORN』(2016)では見事な肉体美を披露。ドラマ「ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママたちの憂うつ~」(2017)ではニコール・キッドマン演じる妻にDVを振るう夫役で第69回エミー賞の助演男優賞、第75回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞し高い評価を得た。
他にも38歳の次男グスタフや、23歳の五男のヴァルターも俳優として活動中。ハリウッドを席巻する美しき売れっ子一家の活躍に、これからも目が離せない。