俳優たちが見た“全編ワンカット”の裏側!『1917 命をかけた伝令』キャストインタビュー
第1次世界大戦時、1,600名もの命がかかった伝令を携え、敵地の奥へ奥へと進んでいく若きイギリス兵スコフィールド&ブレイクの壮絶な旅を、全編ワンカットに見える映像で描いた『1917 命をかけた伝令』。スコフィールド役のジョージ・マッケイ(『はじまりへの旅』)とブレイク役ディーン=チャールズ・チャップマン(「ゲーム・オブ・スローンズ」)という若手主演コンビがインタビューに応じ、撮影の裏側を明かした。(編集部・市川遥)
徹底的なリハーサルで体に染みついたステップ!
Q:オーディションのプロセスについて教えてください。どのようなことをしなければならなかったのでしょうか?
ディーン=チャールズ・チャップマン(以下、ディーン):僕たちはそれぞれ3回のオーディションをした。僕の最初のオーディションはキャスティングディレクターのニナ・ゴールドとで、ブレイクがスコフィールドに“ウィルコがネズミに耳をかじられた話”をするシーンをやった。もらった脚本はそのシーンだけだったけど、僕にはブレイクの性格が大体わかったんだ。戦争の真っ只中にいながら、彼はそれでも友達に笑い話をすることができる──その点に着目して演技したら、2回目のオーディションに招かれることになった。サム(・メンデス監督)と初めて会ったその時、“ワンカット”のことを聞かされたんだ。またそのシーンの演技をして、3回目のオーディションに呼ばれた。ジョージに初めて会ったのはその時で、一緒にいくつかのシーンの読み合わせをやったね。
Q:119分の本編を途切れることなくワンカットに見える映像で描くということで、本作には2種類の脚本があったと聞きました。それらにどうやって取り組んだのですか?
ジョージ・マッケイ(以下、ジョージ):2種類の脚本があったけれど、僕たちがもらったのはそのうちの一つだけだった。もう一つの図式風のものについては、きっとサムとクリスティ(脚本を執筆したメンデス監督とクリスティ・ウィルソン=ケアンズ)に聞いたんだね。それには、その日の全員の動きを示す地図のようなページ──キャラクターが辿るルートや、カメラその他の機材のルートといった全てが描かれたもの──があった。だけど僕たちは事前に長期間リハーサルをしていたから全てが体に染み付いていて、クリスティとサムによる僕たち用の脚本があっただけだった。
ディーン:伝えようとしている物語に集中しただけだったね。半年もリハーサルとトレーニングをする時間があったから、段階ごとに徐々にやっていく感じだった。まず第1次世界大戦、そしてそこで戦った兵士たちについてのリサーチや勉強から始まり、徐々にトレーニングをやって、サムとの作業へと発展していった。それからシーンごとに僕たちが計画を練ったものを基にセットを建設し、撮影が始まる頃には、無意識のうちにステップがわかっていた。ジョージも言ったように、撮影が始まる頃にはかなり楽にできるようになっていたよ。
ジョージ:そう、撮影初日に現場に行って「こういうステップとなる」と説明されるわけではなく、全て皆で一緒に考えたものなんだ。僕たちが持っている全てのアイデアを出し、サムやロジャー(撮影監督のロジャー・ディーキンス)、そして僕たちのインプットを基にそれらを洗練していく。その後、またそこに立ち戻って「あれは半年前だったけど、今でもいいと感じる?」「いや、実はもう少し速くやりたいんだ」「そうだね、じゃあ少し速くやってみよう」とか、「セットは少し短い方が良い」と言った1週間後に一部完成したセットに戻ってきて、「いや、あのコースはもっと長くあるべきだ」「そうだね。まだ完全に掘削していないからそうしよう」などということになった。キャラクターの動きはその人となりによるものだけど、サムが僕たちのことをより知るようになるにつれて変化していくことになる。自分たちに少し寄せてもらうという感じだね。
立ちっぱなしor泥の中!過酷な撮影
Q:撮影チームとはどのようにしてシーンを作り上げていったのでしょうか?
ジョージ:こんな風にチームで協力したのは初めてだった。そうあるべきではないんだけど、俳優とクルーは分かれてしまいがちなんだ。俳優は集中しないといけない。それが僕たちの仕事だ。でもアクションの声がかかってカットと言われるまでの時間以外では、クルーへの対応にそんなことが影響するべきではない。本作ではアクションからカットまでの間でさえ、(俳優とクルーの関係は)まるでダンスパートナーのようだった。本作で最高だったのは、自分以外の人の仕事をより立体的に認識することができたという点だった。本作の唯一の主役的要素は物語そのもの──物語を作るということ──だったんだ。
Q:撮影時から手応えはありましたか?
ディーン:うれしかったのは、経験豊かなフィルムメイカーたちがいたということだった。カメラチームの中のグリップ(撮影機材を扱う助手)のゲイリー・ヒムやマルコム(・マクギルクライスト)といった人たちが「こんなのやったことないよ。初めてのことだ。なんてすごいことなんだ!」と言っていた。上手くショットを押さえることができると、まるでペナルティキックを決めたかのように歓喜する。500メートルを完走すると、誰もが両手を上げて大喜びだ。「ああ、今のは上手くいったぞ」というのはわかるもので、「カット!」の声がかかると、全員が「ヤッター!」となったんだ。最高だったよ。
Q:撮影は肉体的にも過酷なものだったのではないかと思います。どのようなトレーニングをしたのですか?
ジョージ:軍隊訓練をやったよ。それからジムでワークアウトもした。二人は見てくれのいい兵士というわけではないけど、その旅路はとても過酷なもので、映画を通してほとんどずっと立ちっぱなしか、泥の中でひざまずいていなければならなかった。これを毎日のようにやっていく必要があったから、鍛えなければならなかったんだ。あとテイクを重ねること自体によっても鍛えられたね。毎日重い荷物を持って歩かなければならなかったから。僕たちはそういうのをやっているところを観てもらえるけど、それを撮影する人たちもまた全く同じ状況だった。僕たちのよりもずっと重い機材を担いでいたのに、チャーリーやピートといった人たちのことは誰も見てくれないんだ。
二人は熟年夫婦みたい!
Q:撮影時、最も記憶に残っているシーンは?
ジョージ:そうだな……二つあるんだ。いや、たくさんあり過ぎるなあ。
ディーン:全てワンシーンじゃないか。何を言っているんだ?
ジョージ:(笑)。映画をまだ観ていない人のために、話しにくいところもあるけれど、採石場でのブレイクの物語には弱いんだ。あれは僕たちがオーディションしたシーンだったから……。オーディションでのシーンの半分はカットされてしまったんだけど、あのシーンは大好きだ。
ディーン:その前の二人が言い争うところも好きだよ。ブレイクは自分たちが何をすることになるかわかっていなかった。食べ物を取りに行くのかと思った、と認めるところだ。
ジョージ:結婚生活の長い夫婦のようだよね。
ディーン:そうそう!
ジョージ:そこなんだよね。ある意味、彼らは夫婦みたいで、お互いのことをずっと知っている二人のようだ。だからお互いが感じていることを相手に言わない。
ディーン:そう、言わないんだ。ケンカをした後も謝らない。ブレイクは「元気出せよ」と言うかのように話をするだけだ。
ジョージ:(笑)。
映画『1917 命をかけた伝令』は公開中
(C) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.