映画とテレビで活躍するハリウッド女性監督がアツい!(4/4)
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優れたコメディーセンスを発揮するスザンナ・フォーゲル
日本でも米ワーナーメディアの動画配信サービス HBO Max 作品が順次U-NEXTで配信開始となり、高いレベルで品質保証されたHBOブランドの新作が次々と日本に上陸している。本国の評価も高く注目を集めていたのが、「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」(2007~2019)のケイリー・クオコが主演の一風変わったサスペンス「フライト・アテンダント」(2020~)。現代グラフィックデザインの巨匠ソール・バス風のオープニングタイトルから始まるスタイリッシュで遊び心のある映像表現の醍醐味にもあふれた作品だ。このシリーズの全体のトーンや作風を作っている第1話と第2話を監督(兼製作総指揮)しているのがスザンナ・フォーゲルである。
脚本家で監督、作家でもあるフォーゲルは、スマッシュヒットとなった映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)の脚本家の一人としても知られている。企画段階から難産だったが、共同脚本を手掛けて見事に現代にマッチした青春コメディーとして、英国アカデミー(BAFTA)賞と全米脚本家組合(WGA)賞にノミネートされた。
当初は監督も兼ねる予定だったが、結果として俳優のオリヴィア・ワイルドが見事な長編映画デビューを飾ることになった。
フォーゲルが監督と共同脚本を手掛けた作品にはアクションコメディー『バッド・スパイ』(2018)がある。フォーゲルの作品は優れたコメディーセンスを発揮して女性同士の友情を扱った点に共通点があるが、その根底にある現代の女性を描くことにおける主張は、シリアスなドラマ「ザ・ワイルズ ~孤島に残された少女たち~」(2020~)にもよくマッチしているように思う。孤島に不時着した少女たちのサバイバルを描きながら、10代の少女たちを取り巻く問題を浮き彫りにする本作で、フォーゲルは初回の監督(兼製作総指揮)を手掛けてこのシリーズのイメージを決定付けている。
いずれの作品も女性を題材とし、女性が主体となった作品作りが行われている点にフォーゲルの明確な意志が感じられるようでもある。
新作の「フライト・アテンダント」もまた、「ビッグバン★セオリー」のペニー役のイメージを払拭するかのように、ダークな作品でアルコール依存症にトラウマを抱えたフライトアテンダントに挑むクオコが、自ら製作総指揮を兼ねた肝入りの企画だ。
一夜にして殺人容疑者となったキャシー(ケイリー・クオコ)が、二日酔いで飛んでいる記憶をたどりながら真相を追うサスペンスを、テンポ良くスプリットスクリーン(分割画面)を多用した遊び心のある映像で視聴者を楽しませてくれる。特にABBAの楽曲やコンポーザーのブレイク・ニーリーが手掛ける独特の旋律に合わせた編集&スプリットスクリーンといったハイキャンプなスタイルは、クオコのシリアスな中にも笑いを生む絶妙なコメディーセンスを引き立てているし、相性も良い。
本作の第1話で今年の全米監督組合(DGA)のコメディーシリーズ部門最優秀監督賞を受賞したフォーゲルの実力や個性は、作品を観れば簡単に実感することができるだろう。今後は長編監督作が2本控えている。そのうち1本は共同脚本を手掛けるとのことで、映画監督としてのさらなる活躍にも期待が募る。
今の時代に、監督業においても男性と女性で区別し、女性監督とあえてくくることに抵抗がある人もいるかもしれない。だがこの分野において全てのクリエイターが同等の機会、同等の権利を得ることができたとき、そうした区別は初めて無意味になるのではないだろうか。
【参考資料】
「Screen Rant」
※1 https://screenrant.com/falcon-winter-soldier-kari-skogland-interview/
「Variety」
※2 https://variety.com/2021/tv/features/marvel-disney-plus-series-showrunners-1234970797/
「Roger Ebert」
※3 https://www.rogerebert.com/interviews/emerald-Fennell-promising-young-woman-interview
今祥枝(いま・さちえ)
映画・海外TV専門のライター・編集者。『日経エンタテインメント!』『小説すばる』『BAILA』などで執筆。当サイトでは「間違いなしの神配信映画」の企画・編集・執筆担当。Twitter @SachieIma
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