「ベター・コール・ソウル」最終章後半戦スタート！ラロVSガスの直接対決のゆくえは？
今週のベター・コール・ソウル
7週間の休止を経て始まった、「ベター・コール・ソウル」ファイナルシーズンの後半戦（6話）。第7話のクリフハンガーを受けた第8話「狙い撃ち（Point and Shoot）」は、来るぞ来るぞと誰もが待ち構えていたラロVSガスの直接対決が描かれた。全編瞬きするのも忘れるほどの緊迫感とホラー味もある凄まじい展開に、残りの5話がどうなるのかと空恐ろしくなる。（文・今祥枝）
※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」シーズン6についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。
今週のベター・コール・ソウル～シーズン6第8話
ラロ（トニー・ダルトン）がハワード（パトリック・ファビアン）を殺した続きから始まった第8話。ジミー（ボブ・オデンカーク）とキム（レイ・シーホーン）の長い夜は、 オデンカークとシーホーンの文字通りの顔面蒼白といった迫真の演技によって、その恐怖が痛いほど伝わってきた。特にキムの無事を祈りながら、映画『ボーン・イエスタデイ』（1950）が大音量でテレビから流れる中でジミーがハワードの死体と過ごした時間は、想像しただけで胃が痛くなる。
ラロはジミーにガス（ジャンカルロ・エスポジート）を殺しに行けと言うが、ジミーは外に出れば助かる可能性もあると考えたのかキムを行かせるようラロに懇願する。結果キムが行くことになるが、ラロがジミーの言うことを聞いたのはどちらが行こうが関係なく、ガスを殺すのは自分だと決めていたからだろう。ラロはガスのもとからマイクを遠ざけるための陽動作戦として、ジミーとキムを利用したのだ。一方、お互いの手を先読みし合うガスもまたそのことに気づき、ラロが秘密の麻薬製造工場にやってくると確信する。
かくして大方の予想通り、これまでに描かれてきた伏線を回収する形でラロVSガスの一騎打ちとなった。第7話でラロはマンホールから麻薬製造工場へのルートを確認していた。ガスは第5話でマイクと共に建設現場へ行った際に電源ケーブルを確認し、銃を隠してその場所までの歩数を数えていたが、それらの全てが符号した。暗闇で銃声が鳴り響き、どちらが死んだのか!? といった古典的な西部劇の決闘シーンを思わせるものも。「ブレイキング・バッド」に登場しないラロの分が悪いのは当然だが、倒れたラロが死に際にも不敵な笑みを浮かべたあたりも、最期までらしさ全開だった。監督をつとめた御大ヴィンス・ギリガンの気合の入った手腕が冴えまくる。
しかし、真に恐ろしいのはその後。ラロとハワードの死体を麻薬製造工場の地下に埋めるシーンだ。「ブレイキング・バッド」で見慣れたクリーニング工場も麻薬製造工場も、すべてはラロとハワードの死体の上で起きていたのである。何ともぞわぞわする設定だ。これを踏まえた上で「ブレイキング・バッド」のあれやこれやを思い返したり見返していくと、これまでとはまた違った視点で物語を見ることになるだろう。
もう一つ、第8話は途中まで“ラロ劇場”のように思えたが、終わってみればハワードの存在感が大きく、彼への哀れみはさらに増した回でもあった。ハワードの死体が冷蔵庫にぎゅうぎゅうと押し込まれて運び出される描写の痛ましさといったらない。麻薬製造工場でラロの上に投げ込まれる際、「丁寧に」と指示するマイクの言葉も胸に残る。
第8話のアバンタイトルでは、ハワードのジャガー（ナンバープレートはおなじみのナマステ）がカーオーディオから音楽が流れたまま、海辺に放置されており、革靴の片方が波間に漂う様が映し出された。そして車に置かれた財布と結婚指輪も。このアバンタイトルでハワードの死を自殺として偽装したことがわかるが、終盤でジミーとキムが仕掛けた「麻薬中毒説」を流用し、死後も汚名を着せ続ける嘘に加担することが判明した時の苦さはいかばかりか。これまでにも大なり小なりの悪事に手を染めてきた2人だが、かつてないほど重苦しく後悔の念を感じさせる幕切れだった。