若者たちよ、もっとハングリーになれ!
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、インド映画世界から注目を集めたインド発の教育プログラム「スーパー30」の誕生に情熱を燃やした男の実話を基に描いたヒューマンドラマ『スーパー30 アーナンド先生の教室』。(取材・文:森田真帆)
今回の映画は『スーパー30 アーナンド先生の教室』です。
インドで私塾「スーパー30」を開いた、アーナンド・クマール氏の実話を基に描くヒューマンドラマ。天才的な数学の才能を持ちながら、家庭の事情でイギリス留学を諦めた男性が、貧しい家庭出身の30人の生徒に食事と寮と教育を無償で与えるプログラムを立ち上げる。監督を務めるのは『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』などのヴィカース・バハル。『WAR ウォー!!』などのリティック・ローシャンのほか、ムルナル・タクール、アーディティヤ・シュリーヴァースタヴァらが出演する。
2時間半はあっという間!ドラマチックな実話
中川パラダイス(以下、中川):僕、インド映画って映画『きっとうまくいく』、とか『ムトゥ 踊るマハラジャ』とか、これまで何本かしか観たことがなかったんやけど、めっちゃ上映時間長いイメージがあってん。最初2時間半って聞いたとき長! って思ったけど、実際観たらストーリー上必要な長さやなって思った。終わった後に後日談みたいなのあって、この後日談もまたドラマチックやったなぁ。
村本大輔(以下、村本):なんやドラマチックって! 映画なんやからそらドラマチックやろ! アホやなぁ。でも、めっちゃ暴力的なシーンが出てきてびっくりしたわ。治安悪すぎやろ! って(笑)。前にインドの芸人が、「人を何人殺せば政治家になれるんだろ」って言ってたの思い出したわ。インドって、マフィアも政治家もみんな治安悪いから、たとえ教育者でも平気で命狙われるんやろなぁ。
中川:ちょっとミュージカルっぽいところがあったでしょ。自然な曲の流れに入って、もしかしたらインド映画の流れも変わったんかなって思った。演劇のシーンも、自然に歌と踊りを入れてくる感じがした。
村本:お前、なんの評論家やねん! オレはああいうミュージカルシーン大好きだから、逆にめっちゃテンション上がったし、興奮して「オレは飛ぶー!!!!」ってなったわ。
中川:なんか、日本だと頑張って公立の中学校行って、高校行って、大学に行くことだってできるわけやん。でも、インドの場合は完全にひっくり返せない身分で生まれてくる。そこがけっこうびっくりしたところやったわ。だからこそ、アーナンド先生が全部無償で住むところと食事と、教育を与えたあの30人ってどれだけ特別かって思うよな。
村本:オレもこの間までいたロンドンで、めっちゃ有名な語学学校行ってたんやけど、そこはハイブランドに身を包んだ金持ちばっかりやってん。インドの人もおって、たぶんインドのお金持ちなんやろなーって。こういうとこにも来れないインドの貧しい子は、きっとたくさんいるんやろなって思ったわ。
「ドラゴン桜」かと思ったら……
中川:最初タイトル見たときは、「ドラゴン桜」みたいな感じなんかなって思っててん。でも、実際はそうじゃなくて、頭いいヤツらをより選別してちゃんと教育するっていうストーリーでさ。頭が良くて、いい教育さえ受けられたら、もっともっと可能性がのびるってこと。僕はお笑い芸人をやりたくてNSC行ったけどさ、サイエンティストになりたい! とかそういう強い夢を持って学校に行くのが大事なんやなって。ただ学歴を取りに行くんじゃなくて、目をキラキラさせて勉強してる姿に感動したなぁ。
村本:感動しただけじゃダメ。やっぱり刺激を受けて変わらないと! オレはこの先生の授業で、「オレも飛んでやる!」って激しく思ったで。パラダイスみたいに、いつも吉本という牧場でなーんもせずに寝てるブタはそういうふうに思えないんやろな。オレは鷹をみながら、「飛ぶ!!!!」って夢見ている、なかなか飛べないニワトリやねん。ロンドンなんて、飛ぶためにみんなハングリーでさ、コメディアンがみんな売り込みしてた。何かを夢見てる人は、この映画を見て、興奮して立ち上がって「飛ぶぞーーーー!」ってなってほしい。
村本:彼らは仕事行く前の何時間か前に勉強していたけど、オレも一生懸命英語の勉強してる。でもお金あって時間もあるのにダラダラしているのか、必死に勉強して飛ぼうとするかっていうときに、彼らの姿をみてすごく刺激になった。勉強したくてもできない人はいるのに、勉強できるのにしない人ってほんまにもったいないって思ったね。勝ち上がらないとドブを掃除し続けなきゃいけない。だからこそ飛び立たなきゃいけないんだって。漫才のネタを作る時も、そのハングリー精神で勝敗の差って生まれるからね。
自分の可能性を信じて学ぶことの大切さ
中川:高校卒業してからすぐに芸人やったから、学歴なんて関係ない社会で生きてきたけど、なんか学ぶことっておもろいなって思えたわ。中学とか高校のときに、公式を覚えることばっかりんじゃなくて、公式がどんなことなのかを考えさせる先生がいたら、数学もおもろかったかもな。
村本:オレが住んでいた福井はさ、いい大学に行ったヤツなんておらんかってん。自分らが大学行ってないから、親になってからも子供たちに教育が必要なんて思ってないヤツが多いねん。大飯町は原発で働くのが当たり前。地元からしたら、大学に行かんでもいいわって思う人多いからな。そんな福井出身のオレが漫才やりだしてから、福井から漫才めざすヤツが出てくるようになってん。夢とか、いい学校に行くとか、勉強して上にのぼって、生活をより豊かにさせていこうっていうのは、めっちゃ大事。もしも“成功できる可能性”っていう椅子があるとしたら、東京に行ったときに、その数がめっちゃ増えた感じがした。こんなに椅子があったんやなって、めっちゃ驚いた。福井の田舎には3つくらいしかなかったからな。自分の可能性をもっと信じてほしいって思うねん。
中川:僕は大学に行かず、NSCでお笑いを学んだけど、アーナンド先生の教え方って、ちょっとお笑いに似てるなって思ってん。芸人として何回もネタをやっていくうちに、このくらいの強さでボケれば、オチでこんなに笑えるみたいな独自の公式ができていく。笑いの取れる計算式を学んでいくっていうか。おおまかな基本を理解していって、あとは全部応用していくだけっていうのは、笑いに似てるのかもって思った。
村本:今の中川の言葉、恥ずかしいからこれ全部カットしておいてな! 誰が言うてんねん! ネタ書いてんのオレや! それに根本的な話、20年も芸人やってるんやで。お前、20年料理作ってたやつが、いきなり砂糖入れたら甘味が出るって言ってるようなもんやで(笑)!
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『スーパー30 アーナンド先生の教室』9月23日公開
映画『スーパー30 アーナンド先生の教室』公式サイト
Phantom Films, N&G Ent, Reliance Ent, HRX Films.
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。