アカデミー賞助演男優賞の大本命はキー・ホイ・クァン!サプライズ傾向も?
第95回アカデミー賞
前哨戦では、久々の表舞台復帰となった『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンがフロントランナーとしてほかをリードしている。一方、過去の例からサプライズ受賞が多く、受賞予想がしにくいのも同部門の傾向だ。『イニシェリン島の精霊』のブレンダン・グリーソン、『フェイブルマンズ』のジャド・ハーシュらベテラン勢にもチャンスがあるかもしれない。サプライズで候補入りしたブライアン・タイリー・ヘンリー、若手のバリー・コーガンが後を追う。(文・今祥枝)
ブレンダン・グリーソン『イニシェリン島の精霊』
ロンドンの王立演劇学校で演技を学び、教師をするかたわら舞台に立ち、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの一員としても活躍。その後、1990年に『ザ・フィールド』(1990)で映画デビューを果たした。『ブレイブハート』などの大作で知名度を得て、『M:I-2』や『ハリー・ポッター』シリーズなどのハリウッド大作でも活躍するようになる。『イニシェリン島の精霊』では、親友に突然絶縁を告げて恐ろしい行動に出る男性を演じて、コリン・ファレルとの静かな演技合戦に火花を散らす。キー・ホイ・クァンに対抗馬として、アカデミー賞初ノミネートで受賞の可能性は十分にある。
ブレンダン・グリーソン
1955年3月29日生まれ
アイルランド・ダブリン出身
主な出演作
『マクベス』(2021)
『ある神父の希望と絶望の7日間』(2014)
『ハリー・ポッター』シリーズ(2005・2007・2010)
『28日後...』(2002)
ブライアン・タイリー・ヘンリー『その道の向こうに』
ブロードウェイの舞台や人気テレビシリーズへのゲスト出演を経て、2016年のテレビシリーズ「アトランタ」で注目される一方、2018年の『ロスト・マネー 偽りの報酬』と『ビール・ストリートの恋人たち』でも存在感を発揮。以後は話題の大作への出演も続いている。今回、しみじみとした人間ドラマ『その道の向こうに』では、傷ついた女性帰還兵と心を通わせる地元の自動車整備士を好演。作品の規模は小さくても、きらりと光る一作で味わい深い演技を見せて、初のアカデミー賞候補になった。
ブライアン・タイリー・ヘンリー
1982年3月31日生まれ
アメリカ・ノースカロライナ州出身
主な出演作
『ブレット・トレイン』(2022)
『エターナルズ』(2021)
『ゴジラvsコング』(2021)
『ビール・ストリートの恋人たち』(2018)
ジャド・ハーシュ『フェイブルマンズ』
人気テレビコメディーシリーズ「タクシー(原題) / Taxi」に主演し、2度のプライムタイム・エミー賞主演男優賞(コメディー部門)を受賞。1992年にはトニー賞の演劇主演男優賞を受賞するなど、幅広く活躍する演技派俳優として知られている。『フェイブルマンズ』で演じるのは、主人公サミーの祖母の兄で個性的なボリス伯父さん。出番は少ないながらも強烈な印象を残し、共演のポール・ダノに利があると目されていたが、サプライズで『普通の人々』(1980)以来、2度目のアカデミー賞助演男優賞にノミネートの快挙となった。長いキャリアにおけるハーシュの業界での評価は確固たるものがあり、大穴での受賞もあり得る。
ジャド・ハーシュ
1935年3月15日生まれ
アメリカ・ニューヨーク州出身
主な出演作
『アンカット・ダイヤモンド』(2019)
『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(2017)
『インデペンデンス・デイ』シリーズ(1996・2016)
『旅立ちの時』(1988)
バリー・コーガン『イニシェリン島の精霊』
幼少期は祖母のもとで育ち、俳優デビュー後はいくつかのインディペンデント映画に出演。クセのある役や悪役のイメージも強く、『ダンケルク』で国際的に注目された後、ヨルゴス・ランティモス監督の不条理劇『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』で主人公一家に災いをもたらす少年を怪演して、独特のポジションを確立した。『イニシェリン島の精霊』でも、コリン・ファレル演じる主人公の風変わりな隣人役で圧倒的な個性が際立ち、コーガンの本領発揮といった演技でアカデミー賞初のノミネートとなった。
バリー・コーガン
1992年10月18日生まれ
アイルランド・ダブリン出身
主な出演作
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)
『エターナルズ』(2021)
『ダンケルク』(2017)
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)
キー・ホイ・クァン『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
中国系ベトナム人として生まれ、香港を経てアメリカへ移住。『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の子役として注目を浴び、1980年代に『グーニーズ』やテレビシリーズで子役として人気を博した。その後、南カリフォルニア大学映画芸術学部で映画制作を学んだ。卒業後は、スタント・コーディネーターとして『X-メン』の制作に携わるなど、スタッフとして活動していた。Netflix映画『オハナ』で俳優に復帰。マルチバース設定の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で少し抜けたところのある夫・父親と別次元の自分を演じて、賞レースを席巻している。アカデミー賞は初ノミネートにして大本命だ。
キー・ホイ・クァン
1971年8月20日生まれ
ベトナム・サイゴン出身
主な出演作
『オハナ』(2021)
『原始のマン』(1992)
『グーニーズ』(1985)
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)
第95回アカデミー賞授賞式は、3月13日(月)午前7時30分よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて生中継