魔法にどっぷりハマる!『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
編集者レビュー
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』2023年12月8日公開
ロアルド・ダールの児童小説を映画化した『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚(たん)。同作に登場する工場長ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を作るまでを描く。監督・脚本は『パディントン』シリーズなどのポール・キング。若き日のウォンカを『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメが演じ、『ラブ・アクチュアリー』などのヒュー・グラント、オスカー女優オリヴィア・コールマン、『シェイプ・オブ・ウォーター』などのサリー・ホーキンス、『ビーン』シリーズなどのローワン・アトキンソンらが共演する。
編集部・浅野麗 評価:★★★★
『パディントン』シリーズのポール・キングが描くウィリー・ウォンカの世界、しかもそのウォンカを今を時めくティモシー・シャラメが演じるとなったら、その期待は膨らまずにはいられない。おまけに小さな紳士・ウンパルンパはヒュー・グラント。ワクワクを胸いっぱいにオープニングに飛び込むと、そのワクワクはウォンカも同様かのごとく、軽快な歌と踊りで迎えてくれ、一気に本作の世界へと誘ってくれる。これぞファンタジーというカラフルで華やか、きらびやかで心躍る……そんな世界が次々に広がり、夢に向かって突き進む冒険、仲間、家族愛といった児童小説に欠かせない要素がふんだんにミックスされる。
最後は爽快感とともに、まさにホットチョコレートを飲んだ時のような、おなかの中からじわりと感じる温かい気持ちに包まれ、クリスマスシーズンの到来を体感させてくれる。ティモシーのカリスマ性は文句なしに素晴らしいが、ヒューのアクの強さも天下一品。見終わった後しばらくはウンパルンパの歌が流れ続けることは覚悟してほしい。
編集部・香取亜希 評価:★★★★
ジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚とはいえ、ティモシー・シャラメふんする若き日のウィリー・ウォンカに、ジョニデの片りんはない。若く、才能にあふれ、不思議な魔法を使える青年の物語であり、ジョニデ版の奇抜で風変わりなウォンカとはまるで別人だ。
ティモシー版のウォンカは、“世界一のチョコレート店を作る”という夢だけを持つ、まだ何者でもない青年だ。にもかかわらず、誰も見たことも食べたこともないチョコレートを作り、人々を驚かせる。なぜウォンカは魔法のチョコレートを作ることができるのか? そんなウォンカの背景が明かされることなく物語が進行するので多少の違和感は覚えるが、美味しそうなチョコレートの映像美と、ティモシーの甘く麗しい歌声に酔いしれている間に、魔法に種明かしなど不要……と、そんな疑問はかき消されてしまう。それほどに、魔法の力がそこかしこに散りばめられ、不思議な世界にどっぷりとハマることができる。『ハリー・ポッター』シリーズを手掛けたデイビッド・ヘイマンが、プロデューサーとして参加しているからこその仕上がりといえる。
そして、魔法の世界の中でもひと際異彩を放っているのが、ヒュー・グラントふんするウンパルンパ。登場するだけで目が釘付けになる存在感は、さすがクセの強いキャラはお手の物のベテラン芸だ。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』あらすじ
幼いころから世界一のチョコレート店を持つことを夢見ていたウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は、一流の職人が集まるチョコレートの町へやって来る。彼が作るチョコレートは瞬く間に人々を魅了するが、町を牛耳る「チョコレート組合3人組」にねたまれ、何かと邪魔をされてしまう。この町は夢見ることを禁じられた町だった。さらに、ある因縁からウォンカを付け狙うウンパルンパという謎の人物(ヒュー・グラント)が現れる。