映画『インサイド・ヘッド2』評価は?
編集者レビュー
『インサイド・ヘッド2』2024年8月1日公開
第88回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した『インサイド・ヘッド』の続編。思春期を迎えた少女・ライリーの頭の中で繰り広げられる騒動を描く。監督を務めるのは『アーロと少年』などに携わってきたケルシー・マン。日本語版ボイスキャストには大竹しのぶ、小松由佳、落合弘治、浦山迅、小清水亜美らが名を連ねる。
編集部・香取亜希 評価:★★★★★
主人公のライリーは、13歳になり思春期を迎えた。ヨロコビをはじめとするおなじみの感情たちに加え、より複雑な新しい感情たちが仲間入りする。シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシという思春期ならではの感情たちは、大人の階段をのぼっていく上で誰もが感じたことのある感情だといえる。そんな感情たちが活躍することによって、ライリー自身が変化していく様子が、思春期特有の悩みに直面して、自分の感情をコントロールできずに戸惑うライリーとして表現されている。
本作で重要なテーマとなっているのは“自分らしさ”とは何なのかということ。アイデンティティを形成しているのは、良くも悪くもその人が持つすべての感情と、これまでの経験からなるということを、感情たちはライリーの成長とともに気づいていく。たとえ、失敗や挫折というネガティブな経験をしたとしても、その経験は自分自身の糧となる。カラフルで個性豊かなキャラクターの奮闘の裏には、そんなディズニー&ピクサーらしいポジティブなメッセージが込められている。
編集部・市川遥 評価:★★★★★
『インサイド・ヘッド』(2015)は、ピクサー史上最もシリーズ向けの作品といえるのではないだろうか。ピート・ドクター監督はオリジナル版の制作時、続編については全く考えていなかったというが、ライリーの人生の節目で変化・混乱する頭の中を可視化するというアイデアは、彼女が年を重ねるごとに深みを増し、一層輝く。それゆえ、本作は“強化版『インサイド・ヘッド』”という印象だ。オリジナル版で“頭の中の世界”というアイデアがすでに紹介済みであるという利点を最大限に生かし、さらにそこから飛躍した。
序盤こそ、観客の集中力を切らさないための演出か、早いテンポと笑いで楽しさにフォーカスした子供向けな印象を受けるが、新たに登場した不安な感情“シンパイ”が暴走していくストーリーは大人にも刺さるほど深い。“シンパイ”は決して悪者ではなく、全てはライリーの幸せを願っての行動というのも涙を誘い、終盤に訪れる“シンパイ”の心情をセリフなしで見せるアニメーション表現は息をのむほどに美しい。不安を抱えた人々の救いになるであろう、優しくポジティブな感動作となっている。
『インサイド・ヘッド2』あらすじ
転校した学校での新しい生活にも慣れたライリーは思春期を迎えていた。ライリーの頭の中ではヨロコビやカナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリたちがライリーの幸せな暮らしのために奮闘する。ところがあるとき、謎の警報が突然頭の中に大きく鳴り響くと同時に感情たちの暮らす司令部が破壊され、そこへオレンジ色の感情・シンパイが新たに出現する。