【完全ネタバレ】『ヴェノム:ザ・ラストダンス』解説&考察 気になる伏線、コミック関連ネタを一挙紹介
マーベルのダークヒーロー・ヴェノムの活躍を描いた映画『ヴェノム』シリーズ最終章『ヴェノム:ザ・ラストダンス』。同作には、原作コミックのオマージュをはじめ、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とのつながり、ポスト・クレジットシーンで見落としてしまいそうなアイテムが散りばめられている。今後の展開を考察しながら、押さえておくべき重要ポイントを紹介する。(文・ 平沢薫)
※ご注意:本記事はネタバレを含みます。『ヴェノム:ザ・ラストダンス』をまだ観ていない方はご注意ください。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とのリンク
まず、冒頭のエディ/ヴェノム(トム・ハーディ)がメキシコのバーにいる場面は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のミッドクレジットシーンで描かれた、2人がバーで飲んでいる場面の続き。同作で2人がMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)にいたのは、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の魔術の失敗により、別のマルチバースのキャラたちと一緒に呼び寄せられたからだろう。本作の冒頭では、突如開いたポータルによって、エディ/ヴェノムがもとの世界に帰ってきた。『ノー・ウェイ・ホーム』では、ストレンジの魔術によってキャラクターたちが元の世界に戻っていたが、本作では、二人がゼノファージ(=シンビーオートの創造主・ヌルが送り込んだ刺客)がくぐる黄色いポータルらしきものに吸い込まれていた。
また、MCUのバーテンダーが、自分の家族が5年間も姿を消していたと話すのは、サノス(ジョシュ・ブローリン)の“指パッチン”で人々が消えた事件のことだろう。エディがヴェノムとヴィランについて話すときに「あの石が好きな紫色のエイリアン」という言葉も出てくるが、これはインフィニティ・ストーンを集めたサノスのことだろう。
コミック由来のキャラクター、アイテムがたっぷり
本作には新たなクリーチャーや登場人物が登場するが、映画オリジナルではなく、原作コミックのキャラやアイテムをアレンジしている場合も多い。
まず、ヴェノムを追うシンビオートの神・ヌルは、コミックのキャラクターで、初登場は「Venom (Vol. 4) #3」(2018)。シンビオートの創造者であり、彼らによって惑星に幽閉されるという映画での設定は、コミックと同じだ。
ヌルが、脱出するために探すコーデックスも、コミックに登場するアイテム。ただし意味は少々異なり、コミックでは「宿主の情報をすべて保持しているシンビオートの断片」のことを指す。
ヌルがヴェノムを探し出すために送り出す生物ゼノファージもコミック由来で、初登場は「Venom: The Hunted #1」(1996)。ただし、コミックではヌルが創造した生物ではなく、別の惑星の生物で、シンビオートの脳が好物なので彼らを追っている。
実験室に捕獲されていたシンビオートたちは、劇中では名前こそ言及されないが、コミックの「Venom: Lethal Protector #4」(1993)で誕生し、「Carnage, U.S.A. #2」(2012)で名前が判明した、ヴェノムの断片から培養されたシンビオートたちが元ネタかもしれない。テディ・ペイン博士(ジュノー・テンプル)が宿主の個体は、紫色で女性の身体のアゴニー、サディー・クリスマス(クラーク・バッコ)が宿主のグリーンの個体は、コミックでの宿主の名前が同じサディーのラッシャー、警備員ジムが宿主のイエローオレンジの個体はファージが元ネタだろう。
また、登場人物の名前にもコミックからの引用がある。研究所の博士の名前はテディ・ペイン(Teddy Payne)だが、コミックには似た名前のサディアス・ペイン(Thaddeus Paine)がいる。サディアスは「Morbius: The Living Vampire #4」(1992)が初登場の狂信的な医学博士で、エディとヴェノムを切り離して人体実験をしようとする。また、米軍の将軍レックス・ストリックランド(キウェテル・イジョフォー)は、「Venom vol. 4 #1 」(2018)初出の同名人物がいる。こちらはシンビオートと結合して、ベトナム戦争で戦った人物だ。
そして、劇中セリフでコミックでの出来事を連想させるシーンもある。エディが、途中で出会った一家の車に乗り、エイリアンを怖がる幼い息子に優しくすると、ヴェノムが彼にいい父親になれると言うが、これは、コミックではエディに「Venom (Vol. 4) #7」(2028)初出の息子ディランがいることを連想させる。このディランは、コミックではヌルとの戦いで大きな役割を果たす。
アメコミ映画経験者が多数出演
本作には、「何か意図があるのではないか?」と勘繰ってしまうほど、アメコミ映画経験者の俳優たちが多数出演している。
謎に包まれていたヌル役の俳優はアンディ・サーキス。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『ブラックパンサー』で武器商人ユリシーズ・クロウを演じ、前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』では監督を務めた。
ストリックランド将軍役のキウェテル・イジョフォーは、『ドクター・ストレンジ』シリーズで主人公の兄弟子モルドを演じている。エディが途中で出会う一家の父親マーティン役のリス・エヴァンスは、『アメイジング・スパイダーマン』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のカート・コナーズ博士ことリザード役を務めていた。
また、ペイン博士役のジュノー・テンプルは、DC映画『ダークナイト ライジング』でキャットウーマン(アン・ハサウェイ)のルームメイト・ジェン役を担当。ちなみに、本作主演のトム・ハーディも『ダークナイト ライジング』でヴィラン・ベインを演じていた。このように多数のアメコミ映画経験者たちが別のキャラクターを演じるのは、ヴェノムの世界が、他のアメコミ映画とは別の世界だと強調するためだろうか。
ヴェノムは帰ってくる?伏線かもしれない2つのシーン
さて、感動的な最期を遂げたように見えるヴェノムだが、そうではないかもしれないと思わせるシーンが2つある。
一つは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のおまけシーン。ヴェノムは、自分たちのユニバースに戻る際、バーのカウンターに、シンビオートの小さな断片を残していた。あの断片は、まだMCUに残っているはず。ヴェノムは、あの断片から復活することも可能なのではないだろうか。
もう一つは、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』2つ目のポストクレジットシーン。バーテンダーが遠くに去っていく画面の手前に、ゴキブリがチョロリと登場し、その近くにあるヴェノムの断片を収納していた容器との間に電気のような光が走る。これは、ヴェノムがゴキブリに寄生しており、将来的に復活することを示唆しているのではないだろうか。その前振りとして、本編中やエンドクレジットで、ヴェノムは多様な生物に寄生した姿を見せていたのかもしれない。そんな気もしてくるのだ。
果たしてヴェノムは本当に死んだのか。その答は、今後のソニーのマーベル映画もしくはディズニーのマーベル映画で明かされるかもしれない。双方の新作を首を長くして待つしかない。
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』全国公開中