女優は90歳を超えた素人さん、好き勝手な演技を披露した『8月のランチ』
第21回東京国際映画祭
4人の高齢女性を預かることになった中年男の姿を描くイタリアのコメディー映画『8月のランチ』が第21回東京国際映画祭のコンペティション作品として上映され、来日したジャンニ・ディ・グレゴリオ監督が上映後のティーチインで観客の質問に答えた。
個性的でエネルギッシュな女性たちの姿が印象的な本作だが、出演するおばあちゃんたちはみんな素人の女性ばかり。4人のおばあちゃんのうち、1人はジャンニ監督の90歳の叔母。母親役は93歳の女性で、監督の家族の友人。そしてあとの2人は何と、「ローマの老人ホームでオーディションをして決めました!」とのこと。このオーディションには、映画出演を夢みて大勢のおばあちゃんたちが集まったそう。
「プロの女優を使うと映画が冷たいものになってしまう気がした」というジャンニ監督。逆に素人を使うことで現場ではいろいろな問題があったという。「撮影を始めてすぐに気付いたのは、彼女たちを演出することは不可能だってこと。まったく手に負えないんだ!」と思い出したように苦笑いするグレゴリオ監督。「セットを組んで、照明をたいてカメラをセッティングするんだけど、おばあちゃんたちはほかの場所で始めてしまう。それでカメラを動かすハメになる。だから、彼女たちがやりたいことをカメラが追う、という形で撮影したんだ」とおばあちゃんたちのペースに完全に巻き込まれていたよう。
そんな元気なおばあちゃんたちとは、撮影後も連絡を取り合っているそう。「毎晩のように、今何してるの? お酒を飲み過ぎていない? と電話があって、まるで母親が4人に増えたような感じだよ」と苦笑しながらもうれしそうな笑顔を見せた。
映画『8月のランチ』は、アパートの管理人から老いた母親を預かるよう頼まれた中年男、ジャンニが、自分の母親と管理人の母親、さらに管理人の叔母たちの面倒を見ることになる心温まるコメディー。