圧巻!究極ディザスター映画『2012』が全米第1位に決定 -11月18日版
全米ボックスオフィス考
6,524万ドル(約58億7,160万円)という巨額の売り上げを収め、ジョン・キューザック主演の映画『2012』が週末全米ボックスオフィスのナンバーワンを飾った。(1ドル90円計算)
2008年の映画『紀元前1万年』のあまりの愚作度に、映画ファンから危うく総スカンを食らいかけたローランド・エメリッヒ監督だが、『2012』のおかげで文句なしのトップに返り咲いた。3,404館・6,500スクリーンという超大規模なロードショーを打ち出したこの超大作は、製作費に2億ドル(約180億円)を投じたといわれるSFXてんこ盛り映画である。当初の予想に反して、思った以上に感動的な人間ドラマも組み込まれており、一般客の反応は上々。11月デビュー作品の中では、歴代興行成績の総合第7位という記録も打ち立てた。配給ソニー・ピクチャーズのリサーチによると、同作品を観に来ていた週末の観客52パーセントは男性で、全体の55パーセントは25歳以上の観客であったという統計が出ている。
かわって第2位は、先週から25.8パーセントの降下率を示し、ワンランク・ダウンとなった映画『Disney’sクリスマスキャロル』で、2,231万ドル(約20億790万円)の売り上げ。
そして、今週のサプライズは第3位にランクインした映画『プレシャス:ベイスド・オン・ザ・ノベル・プッシュ・バイ・サファイア』(原題)だ。先週の第12位からすごい勢いでランキングを駆け上がり、約214パーセントの上昇率で587万ドル(約5億2,830万円)という数字をたたき出して、いきなりトップ3に食い込んできた。
製作費1000万ドル(約9億円)という昨今のハリウッド映画予算のトレンドからすればかなり地味な作品で、ある意味ではマイナー扱いの映画がいきなりこの成績である。小さな役でマライア・キャリーやレニー・クラヴィッツ、モニークといったスターたちが出演しているものの、ほかに名の知れた俳優は見当たらず作品のあらすじも肥満の黒人女性が絶望のふちからはい上がって立ち直っていく人間ドラマという内容。どこをどうスライスしても大ヒットにはほど遠い印象を受ける作品だが、そのヒットの秘密とは?
それは製作を務めたオプラ・ウィンフリーという女性にある。映画『カラーパープル』の主演女優を覚えておられるだろうか? 彼女がオプラである。現在放映中の大人気トークショー「オプラ・ウィンフリー・ショー」の司会者であるだけでなく、番組を通じて女性の元気向上に大きく貢献し、女性雑誌編集長、女性用テレビチャンネル社長を務めるだけでなく、国内の恵まれない人々をはじめ、アフリカの子どもたち(特に少女たち)に向けての大々的な援助など、とにかくアメリカ女性の尊敬を一心に集めているセレブなのだ。彼女の触るものはゴールドに変わるといわれるほどビジネスの采配(さいはい)にもたけ、その影響力たるや大統領も真っ青とも……。というわけで、一見地味に見えるこの『プレシャス:ベイスド・オン・ザ・ノベル・プッシュ・バイ・サファイア』(原題)も、オプラーがかかわったことによって、ゴールドに変わったわけだ。成功する独立映画の必須項目は、「セレブを後ろ盾につける」ということか。
第3位の説明がずいぶん長くなってしまったが、お次は第4位で先週からワンランクダウンの映画『ザ・メン・フー・ステア・アット・ゴーツ』(原題)で586万ドル(約5億2,740万円)の売り上げ。上映館が10館増えたにもかかわらず、降下度54パーセントで関係者は懸念顔かもしれない。また、ユアン・マクレガーとジョージ・クルーニーという豪華キャストが出演しているが、総合売り上げは依然として製作費を下回る2,400万ドル(約21億6,000万円)と少々地味めである。
そしてトップ5の最後を飾るのは、映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』で508万ドル(約4億5,720万円)。上映館数も444館減り、次はいよいよDVDでの商戦が待っている。
さて来週のチャート予想だが、これはもう予想するまでもなくトップを飾るのは十中八九、映画『ニュームーン/トワイライト・サーガ』であろう。すでにアメリカ各地で先行深夜ロードショーのチケットが売り切れるところも出ており、週末の映画館はティーンの少女たち(それに混ざって年のいった女性たち……)の黄色い声で埋め尽くされそうだ。
『ニュームーン/トワイライト・サーガ』に雄々しくも対抗して、今週デビューを飾る作品があと数点ある。上位入り可能性のあるものとして、まずは映画『プラネット51』(原題)。全米配給トライスター・ピクチャーズのコメディー・アニメ映画だが、『ニュームーン/トワイライト・サーガ』を観に行くには少々若過ぎる映画ファンとその両親たちをターゲットに、チャート上位争いを繰り広げる可能性あり。
次は、このところ飛ばしまくっているサンドラ・ブロック主演の人情スポーツ映画『ザ・ブラインド・サイド』(原題)。この役でサンドラはアカデミー賞を狙っているといううわさも出ており、この作品での彼女の演技のさえに関心が集まる。
渋いところでは、インディーズ映画往年の(!?)名作映画『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』のリメイク版映画『バッド・ルーテナント:ポート・オブ・コール・ニューオリンズ』(原題)が公開される。オリジナルで主役だったハーヴェイ・カイテルに代わりニコラス・ケイジが主役を務め、脇役がセクシー美人女優エヴァ・メンデス、そしてベテランのヴァル・キルマーと、興味をそそられる一本である。(取材・文:神津明美 / Addie Akemi Kohzu)