アカデミー賞ノミネートが確実視される話題作『ザ・キングス・スピーチ』主演のコリン・ファースを直撃!
今年のトロント国際映画祭で最高賞である観客賞を受賞し、現在アカデミー賞ノミネートが確実視されている話題作『ザ・キングス・スピーチ / The King's Speech』(原題)について、主役を演じたコリン・ファースが語った。
同作は、イギリスの現女王エリザベス2世の父ジョージ6世を主人公にし、吃音症を抱えた内気なジョージ6世が、言語療法士の助けを借りて徐々に障害を克服し、第2次世界大戦の開戦のスピーチで、見事に国民の心をつかむまでを描いた感動作。
自身が演じたジョージ6世について、コリンは「僕が生まれたときは、ジョージ6世はすでに崩御されていたが、個人的には、母がジョージ6世が吃音症を抱えていたことを当時よく同情していた(一度吃音症を克服したが、肺がんを摘出した際に、吃音が再発していた時期があった)という話を、彼女から子供の頃に聞かされていた。さらに、彼は他の国王と比べて、比較的若くしてこの世を去ったことは知っていたが、彼についてはほとんど何も知らなくて、彼のスピーチさえ聞いたこともなかったんだ」と以前はあまり王族に関心がなかったようだが、「だが、この映画のリサーチを通して、彼が吃音症も含め、イギリスの国民から誤解された解釈をされていると思ったんだ。実際に彼の手紙を読ませてもらって、僕は、彼が非常に思慮深く、知恵に富み、エレガントな人物であったということがすぐに把握できたよ」と述べ、これからジョージ6世が人々から再評価されることを素直に喜んでいた。
オスカー受賞経験のある俳優ジェフリー・ラッシュとの共演について「彼とはこれまで何度か会っていたが、本格的に彼と知り合いになれたのがこの作品だったんだ。彼は話が好きで、どんなことにでもユーモアを見つけることのできる人物だよ。この映画の撮影は過酷で、毎日撮影が終わると、かなりの疲労状態に陥っていたが、僕らはすぐに帰らずにお互いの話をしたり、明日のシーンについても語ったりもしていたんだ。それに彼の演技は、明らかで陳腐なものはなく、常に意外な発想で演じている気がする」と絶賛した。
トロント国際映画祭での受賞と、この映画の見所について「今のところ、あらゆる年齢層の人々がこの映画を評価してくれている。歴史的には、そんなに知られている出来事ではないし、吃音症を抱えた人たちがあまりいない現代で、なぜこんなに評価されたのか自分なりに考えてみたんだ。その理由は、まず誰もが完璧に人とのコミュニケーションを持つことができないことにあると思う。それは、ある人の前に立つと怯えてしまい、上手く発言できなかったり、好きな人の前で上手く表現できなかったりと、それぞれがコミュニケーションに対して、それなりの問題を抱えていると思うんだ。ただ、そんなコミュニケーションが不得手であった人物が、吃音症という障害を乗り越えようとする。そんな点が人々の共感を得たと思う」と困難を乗り切るという普遍的なアプローチが支持を得たようだ。
映画全体を通して、コリンの演技は目を見張るものがある。映画『シングルマン』で今年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた彼。来年のオスカーを受賞する可能性のある俳優として、おそらく彼が現在フロントランナーを走っている。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)