アカデミー賞受賞のカギはPR!バトル勃発!大金と私情入り乱れ勝敗はいかに!?
第83回アカデミー賞
ハリウッドの映画業界には、才能だけでは食べていけないという現実がある。アカデミー賞においてもそれは同様で、「良い映画」というだけでは受賞できないという実情がある。ではどこで差をつければ良いのか? それはPR合戦に勝つことである。
PR合戦の第一関門はアカデミー賞候補の選抜をくぐり抜けることである。毎年、このために大手映画スタジオは何億というPR費用をつぎ込む。オスカーを受賞した後の報酬は計り知れず、この大金の投与もいわば投資ということである。
今年のアカデミー賞候補PRバトルで大いに目立っているのは、かつて映画会社ミラマックスを創業した映画業界の実力者であり、敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン率いるワインスタイン・カンパニーだ。このスタジオはインディーズ映画を専門とし、配給される映画は、独立系とはいっても、ハーヴェイの存在を後ろ盾に、大きな資金力を持つ。
同社はアカデミー獲得に向けて、マーク・ウォールバーグ主演の映画『ザ・ファイター(原題)/ The Fighter』、そして欧州ではすでに数々の映画賞をものにしている話題作『英国王のスピーチ』の2作品を持ち駒に気炎を上げている。ワインスタインは映画賞獲得を根回しするための超豪華セレブ・パーティーの開催を得意としており、業界では尊敬されると共に、狙ったものは逃さないサメのような人物であると恐れられている。
それに対抗するのは、こちらも豪腕プロデューサーとして名をはせるスコット・ルーディン。彼が製作をした映画『トゥルー・グリット』(パラマウント配給)と『ソーシャル・ネットワーク』の2作品はすでにオスカー候補の呼び声も高い。
実はこのルーディンとワインスタインは、2003年の映画『めぐりあう時間たち』で一緒に仕事をした際、主演女優の1人だったニコール・キッドマンにツケ鼻を付けるか付けないかで大喧嘩をして険悪な仲となり、2008年の『愛を読むひと』の際にそれが悪化。映画の公開時期を設定する際に意見が大きく食い違った2人はまたもや大げんかとなり、ついにはスコットがプロデューサーを辞め、映画のクレジットからも自分の名前を削らせるまでに発展した。
とにかくそれ以来、スコット・ルーディンとハーヴェイ・ワインスタインといえば業界内では知る人ぞ知る犬猿の仲。その仲は、アカデミー賞時期になると両氏それぞれが製作している映画のPR合戦を通じて激化する。例えば、相手の製作した作品の記者会見に「仕置き人」をレポーターとして紛れ込ませて、普通のジャーナリストなら絶対しないような作品に対しての恥ずかしい質問や言葉に詰まるような質問をさせたりするというような醜い争いも行われるという。
第83回アカデミー賞にでは、両人が製作した作品が2本ずつ、有力作品として挙げられており、これから映画賞シーズンが本格化するにつれて、この2人の有能プロデューサーの間でどんな火花が飛び散るかが注目される。(文・取材: アケミ・トスト/Akemi Tosto)