アカデミー会員の好みを分析…英国かぶれでオタクは嫌い?
第83回アカデミー賞
先週までアカデミー賞の予想レースで優位に立っているといわれていた映画『ソーシャル・ネットワーク』が、今週に入って映画『英国王のスピーチ』に押され始めた。
これは29日に発表された第63回全米監督組合賞(DGA賞)で『英国王のスピーチ』のトム・フーパー監督が最優秀監督賞を受賞したことが大きい。この受賞結果は『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャー監督が監督賞を受賞するという大方の予想を裏切るもので、映画ファンだけでなく、多数の評論家たちも、この結果を驚きをもって迎えたようだ。そして、これを受け、アカデミー賞獲得作品の予想にも大きな変動が出てきた。
DGA賞の受賞以外にも『英国王のスピーチ』をアカデミー賞獲得に向けて後押しする要因がいくつかある。まず、アカデミー会員たちの英国好きの傾向だ。近年のアカデミー賞を見るだけでも、イギリス出身のダニー・ボイル監督による作品賞受賞作品『スラムドッグ$ミリオネア』をはじめ、英国女優ヘレン・ミレンが主演女優賞を受賞した映画『クィーン』、映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でもやはり英国俳優のダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞を受賞するなど、アカデミー賞会員たちの「英国かぶれ」の傾向がうかがえる。
さらに、アカデミー賞会員たちは好意の持てる監督、そして好意の持てる主人公を好む傾向もある。フィンチャー監督は気分にムラがあり、付き会いにくい部分があることで、業界では有名な人物だ。それに比べ、フーパー監督はあまり感情の起伏を表に出さない礼儀正しい英国人……というイメージがあり、それだけでフィンチャー監督から一歩リードを奪っているといえる。
また、『ソーシャル・ネットワーク』でジェシー・アイゼンバーグが演じた主人公、マーク・ザッカーバーグも人好きするタイプとはいえない。一方で、『英国王のスピーチ』の主人公ジョージ6世は、吃音(きつおん)を克服し、戦時中には国民へのスピーチを通して民衆に勇気を与えた万人のヒーローだ。その点でもこの作品は『ソーシャル・ネットワーク』の上をいっているというわけである。
現地時間2月2日にはアカデミー本部から、最終投票用紙が会員達に向けて郵送されるが、果たしてその結果はどう出るのか。アカデミー授賞式本番に期待したいところだ。
アカデミー賞授賞式は、現地時間2月27日にコダック・シアターで開催。日本ではWOWOWにて2月28日午前9時30分より生放送される。
(文・取材: アケミ・トスト/Akemi Tosto)