被爆者専用老人ホーム追うドキュメンタリーで厚生労働大臣トーク
24日、長崎の高齢被爆者の姿を追ったドキュメンタリー映画『夏の祈り』のトークショーが東京・渋谷のアップリンクで行われ、作品の舞台となった被爆高齢者のための特別養護老人ホーム「恵の丘長崎原爆ホーム」を今月慰問した小宮山洋子厚生労働大臣が出席、坂口香津美監督と共に被爆者の高齢化について語った。
本作は、カメラが2年間にわたって「恵の丘長崎原爆ホーム」に密着し、入居者の人々が原爆の恐ろしさを語り継ぐため、被爆体験をテーマにした劇に取り組む姿を記録している。同ホームへの長期密着撮影が許されたのは本作が初めて。作品では、劇を観て涙する子どもたちの姿が印象的に映し出される。
今月9日の長崎原爆忌に、野田佳彦首相と共に同ホームを慰問した小宮山大臣は「皆さん車椅子で、普段立ち上がるのも大変な方がこん身の力で訴えていらっしゃることに、心を打たれるところがありました」と施設の様子をコメント。「坂口監督が2年間密着できたのも、施設の皆さんの体験を伝えていかないといけないという思いがあるからだと思います。これは貴重な記録だと思うし、伝えていかないと」と本作の重要さをアピール。
現在被爆者の最年少は67歳と高齢化が進み、後世に体験を伝える被爆者が減ってきていると明かした小宮山大臣。対策のひとつとして「厚生労働省では、長崎と広島の原爆死没者追悼平和祈念館で被爆者の情報を集めたり教えたりしています。また長崎の平和記念館では、被爆体験を語り継ぐ人材を育成するため『被爆体験記朗読ボランティア育成講座』を開いて、2014年から活動開始する予定です」と説明した。
また国外に対しては、外務省によって被爆者が国際的な場で体験を語る、「非核特使」という制度も行われていると明かし、「被爆者の方が体験を世界に伝えていけるように、77名の方にやっていただいています。この(後世に伝えていくという)問題をどう引き継いでいくのかがわたしたちの責任です。しっかりと後世に伝わるように最大限努力させていただきたいと思います」と締めくくった。(取材・文:中村好伸)
映画『夏の祈り』は渋谷アップリンクほかにて公開中