フィルム撮影の選択肢はなくなる?黒沢清監督、撮影はデジタル派もフィルム存続希望
第25回東京国際映画祭
現在開催中の第25回東京国際映画祭で26日、キアヌ・リーヴス製作のドキュメンタリー映画『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』が上映され、映画監督の黒沢清とシネマトグラファーの栗田豊通が終了後にトークショーを行った。
本作は、デジタル化が進んでいる映画撮影技術の現在と未来を探るドキュメンタリー。近年急速にフィルム撮影にとって変わりつつあるデジタル撮影について、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、スティーヴン・ソダーバーグらにインタビューし、映画界におけるデジタル撮影の傾向と現実を浮き彫りにしている。
黒沢監督は本作について「普段は目にすることのない、有名な撮影監督の方たちのインタビューも観ることができて良かった。フィルムからデジタルに移行する流れの中にいて、自分が何となく感じていたことについて、インタビューされる方たちがはっきり意見を言っている姿に感銘を受けました」と共感する部分が多かった様子。そんな黒沢監督は、自身の映画製作については現在デジタル派だとしながらも「フィルムで撮るという選択肢がなくなるのはこわい。基本的にフィルムでもやれるチャンスは残しておきたいですね」と希望を語った。
また、観客から現在の3D映画についてどう思うか聞かれた黒沢監督は「『アバター』以降、何本か3D映画を観たけど、正直いまいちですね。観ていて疲れるし、暗いし、インチキくさい。ウソの奥行きという感じ。技術としてまだ未成熟だと思う。でも、今後技術が発達してクリアで鮮明な3Dが出てきたらまた別だろうけど」と現在の3D技術にかなり辛口な意見を述べる場面もあった。
一方、三池崇史監督やロバート・アルトマン監督作品の撮影など国際的に活躍する栗田は「最近、富士フイルムが国産映画用フィルムの生産をやめたり、コダックが倒産したりして、僕たちはそういう(デジタル化の)時代にいることを実感させられた。デジタル化したことで、(役割分担など)現場の関係も変わってきている。このツールを使ってどういう現場を作っていくかがこれからの課題ですね」と現場の立場から意見を語っていた。(古河優)
映画『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』は12月22日より渋谷アップリンク、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開