『地獄でなぜ悪い』園子温監督&キャスト陣がベネチアで会見!海外ならではの質問に苦笑い
第70回ベネチア国際映画祭
現地時間29日、第70回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に出品された映画『地獄でなぜ悪い』の園子温監督、國村隼、長谷川博己、二階堂ふみ、神楽坂恵が記者会見を行った。同作は、ある事情からまな娘を起用した映画作りに奔走することになる極道の親分と、売れない自主映画監督がまさかのコラボで究極のヤクザ映画を撮ることになるというハイテンションコメディー。
第68回ベネチア映画祭で上映され、二階堂にマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)をもたらした園監督作『ヒミズ』(2011)とは全く異なるテイストにまず司会者からは製作意図に対する質問が出た。園監督は「『ヒミズ』で東日本大震災、『希望の国』で原発事故を題材にした映画と立て続けに撮って、もっと日本人を明るくさせるエンターテインメントを作りたい。その気持ちが一番大きかった」と本作に挑んだ心境を明かした。
同時に本作は、園監督が約20年前に書いた脚本が基となっており、大好きだったという深作欣二監督作をはじめとする東映ヤクザ映画へのオマージュが込められている。しかし、イタリア人を始めとする海外の人にとっては、同じように日本のヤクザ映画に影響を受けて製作されたクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』の方がなじみ深く、「タランティーノからインスピレーションを受けたのか?」という、海外の映画祭ならではの問いも多かった。
園監督は思わず苦笑いをしながら「ちょっとそれは違う」と否定。続けて「20年前の脚本なので、東映ヤクザ映画へのオマージュであり、むしろ僕もタランティーノもブルース・リーに影響を受けていると思います。20年前から、首が吹っ飛ぶシーンが脚本にありました」と説明した。
首だけでなく大量の血しぶきも舞う本作が、日本ではPG12(12歳未満の年少者の観覧には、親または保護者の助言・指導が必要)と小学生でも観賞可能であることを園監督が伝えると、司会者から「この映画のバイオレンスレベルからいったら、欧州では問題があるかも」と驚きの声が上がった。園監督も「日本でも驚くべきことで『これはすべてジョーク、お笑いなのだ』と判断されたんだと思います。たぶん審査した人たちも、その日に何か気分が良いことがあって判断が緩くなったのではないでしょうか?」と語り、会場から笑いが起こっていた。(取材・文:中山治美)
映画『地獄でなぜ悪い』は9月28日より新宿バルト9ほか全国公開
第70回ベネチア国際映画祭は現地時間9月7日まで開催