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キム・ギドク監督、韓国批判は「自国を愛すればこそ」

第70回ベネチア国際映画祭

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ベネチアのレッドカーペットを歩いたキム・ギドク監督
ベネチアのレッドカーペットを歩いたキム・ギドク監督 - (c) La Biennale di Venezia

 韓国のキム・ギドク監督の新作『メビウス(原題) / Moebius』が現地時間3日、第70回ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映された。過激な描写をめぐって韓国公開では一部シーンのカットを余儀なくされたが、ベネチアでは完全オリジナルバージョンでの上映で、今年一番の話題作に朝9時の初回上映は約1,000席が満席となった。

金獅子賞授賞作『嘆きのピエタ』場面写真

 昨年のベネチア映画祭では『嘆きのピエタ』で最高賞の金獅子賞を受賞し、健在ぶりを世界にアピールしたキム監督。その勢いは止まらない。傑作『悪い男』(2001)のチョ・ジェヒョンと再タッグを組んだ新作は、父親の浮気が発端となる家庭の崩壊劇。常軌を逸した母親の刃物が息子にまで及び、まさかの親子版「阿部定事件」を引き起こす衝撃作だ。

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 自責の念に駆られた父親が息子の性的機能回復のために奔走する歪んだ父子愛がつづられ、設定そのものが各国でも波紋を呼ぶことは必至だ。特に日本の映倫にあたる韓国の映像物等級委員会で問題視されたのが、息子役のソ・ヨンジュと母親と愛人の一人二役を務めたイ・ウヌの近親相姦(そうかん)を想起させるシーンで、一時は事実上の韓国国内上映不可の判断を下された。

 その後、キム監督が問題シーンを含む約3分をカットして譲渡し、9月5日の韓国公開にこぎ着けた。しかしキム監督の憤りは収まっていないようで、この日の会見でも「夢の中のシーンで、しかも役者たちが近親相姦(そうかん)のフリを演じているだけであって、法に抵触するようなことはしていない。検閲の問題は今後さらに取り組んでいかなければならないでしょう」と持論を展開した。

 そんなキム監督に、イタリアの記者から「あなたはいつも韓国を批判するような暴力映画を作っているが」という質問が飛ぶと、キム監督は「わたしが批判するのは、自国を愛すればこそなのです。国を愛するというのは、疑問を投げかけることをやめたり、(問題を)見て見ぬふりをするということではないと思います」と毅然(きぜん)と答えていた。(取材・文:中山治美)

第70回ベネチア国際映画祭は現地時間9月7日まで開催

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