“美食映画部門”で料理家・辰巳芳子のドキュメンタリーが海外初上映!
第61回サンセバスチャン国際映画祭
第61回サンセバスチャン国際映画祭の“美食映画部門”ことキュリナリー・シネマ部門で現地時間23日、ドキュメンタリー映画『天のしずく 辰巳芳子 "いのちのスープ"』が公式上映された。同作品が海外で上映されるのはこれが初めてだ。
第59回から新設されたキュリナリー・シネマ部門では世界各国から集めた料理を題材にした映画の上映と、観賞後には地元の著名シェフが腕を振るった映画にまつわるディナーを堪能できるという、美食の町として知られるサンセバスチャンならではの夢のコラボレーションが楽しめる。今年は初めて日本映画が2本選ばれ、そのうちの1本が料理家・辰巳芳子さんの生きざまを追った本作だ。
この夜、料理を担当したのは地元バスクのレストラン「アンドラ・マリ」のスリーニャ・ガルシアさんと「Xarma(シャルマ)」のアイスペア・オイアネーデルさんの女性シェフ2人。映画は字幕なしで鑑賞したそうだが、オイアネーデルさんは「日本人の繊細な料理への愛情を感じました。日本もバスクもスピード社会だと思いますが、ゆっくり手間暇かけて調理する姿に感銘を受けた」と言う。
この日のディナーでは、地元農家に特注で栽培してもらったシソをあしらった「キューブビーフとフォアグラのタルタル、チーズ・ボンボン載せ」や、デザートにパイナップルをビーツで紫色に色付けした「パイナップルのキャラメリゼ、バニラホイップクリーム添え」が振る舞われた。
これには現地入りした河邑厚徳監督も感激しきり。他にも河邑監督は、砕いたブラックオリーブとパルメザンチーズで「大地」を作り、その上にトマトのコンフィを載せた一品を絶賛し、「“太陽と土”というこの映画のテーマを一皿で表現していて素晴らしい」とシェフ2人とがっちり握手を交わしていた。
これが国際映画祭デビューとなった河邑監督が「インドを旅行したときに『No Spice, No Life』(スパイスのない人生なんて)という言葉を悟ったが、今回新たに感じた言葉があります。『No Cinema, No Life!』(映画のない人生なんて!)」と叫ぶと、会場からは笑いと温かい拍手が沸き起こった。(取材・文:中山治美)
映画『天のしずく 辰巳芳子 "いのちのスープ"』は横浜・ジャック&ベティと鹿児島・ガーデンズシネマにて公開中
第61回サンセバスチャン国際映画祭は現地時間9月28日まで開催