『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピ監督がライアン・レイノルズと組んだ異色の殺人鬼映画とは?
映画『グリーン・ランタン』のライアン・レイノルズが新作『ザ・ヴォイス(原題) / The Voice』について、イラン人女流監督マルジャン・サトラピと共に語った。
マルジャン・サトラピ監督・脚本・原作『ペルセポリス』フォトギャラリー
本作は、母親の死後、精神安定剤を飲みながらバスタブ工場に勤めるジェリー(レイノルズ)は、薬をやめるたびに飼い犬ボスコの良心的な会話や飼い猫ミスター・ウィスカーの悪のささやきを耳にしていたある日、憧れの女性フィオナ(ジェマ・アータートン)とのデート中に偶然に彼女を殺してしまい、飼い猫と犬にどうすれば良いのか判断を仰ぐが、新たな問題に巻き込まれていくというストーリー。アナ・ケンドリックやジャッキー・ウィーヴァーが共演し、映画『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピがメガホンを取った。
今作では、殺人犯にしか理解できない境地が描かれているが、それが出演理由なのか。「この役が殺人鬼と化すことは関係なかった。僕らはニュースで殺人事件を見るたびに、勝手に殺人犯の内面を想像し、サディストや、ひどく感情的な人物と考えるし、映画に登場する悪役も悪い心を基に行動することが描かれているが、それは違うと思う。あくまで、彼らは反対の信念から行動していて、僕自身はそんな信念を持った悪役に惹かれる。だから、この脚本を読んだ時に主人公が殺人鬼と化すものの、ジェリーの内面には共感が持てたし、11歳の時に母親が亡くなってから全く精神が成長していないところに惹かれた」とライアンは答えた。
ジェリーだけでなく、飼い猫と飼い犬の声も担当したライアンは「マルジャンは、当初これらの声は声優に任せる予定だった。でも、彼らの声はジェリーの心理の一部によって聞こえるもので、それならば僕が彼らの声優も務めるべきと判断して、オーディション用に携帯に録音した彼らの声をマルジャンに送った」と明かした。
ライアンからマルジャン監督にアプローチしたそうで、「彼は素晴らしい俳優だと理解していたけれど、それでもわたしと違うビジョンを持った俳優ならば結果はうまくいかないから、まず彼に会ってみた。すると、ライアンもわたしも、ジェリーの犯罪行為だけは性的な変質者に見えても、ジェリーの内面は性的な変質者ではないことを理解していたことがわかった。それで参加を決めた」とマルジャン監督が答えた。
映画は、全てのジャンルが含まれた異色の殺人鬼映画だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)