樹木希林、海外でも安定の樹木節でカナダの観客大笑い!
第40回トロント国際映画祭
女優の樹木希林が現地時間14日、河瀬直美監督と共にカナダで開催中の第40回トロント国際映画祭で行われた映画『あん』の北米プレミアに出席。上映後のQ&Aでは河瀬監督が観客と共に映画を鑑賞していたと明かすとともに「でもわたしは外で日に当たっていました」と海外でも安定の樹木節でカナダの観客を大笑いさせた。
河瀬監督は「現場でもいつもブラックジョークというのでしょうか、このように場を和ませることを言ってくださるのと同時に、演技に入ると非常に真摯(しんし)でさまざまなことを理解されていて、ご一緒することができてよかったです」とそんな樹木に感謝。樹木は役づくりについて聞かれると「河瀬さんはこんなに華奢でこんなに女性らしくしているのに、仕事場に入ると豹変するので、その強さに触れたいなと思って参加しました。下調べは何もしていません」と応じ、その言葉に会場は再び沸いた。
本作は、ドリアン助川の同名小説を原作に、元ハンセン病患者の老女・徳江(樹木)とどら焼き店の雇われ店長・千太郎(永瀬正敏)、そして店を訪れる女子中学生・ワカナ(内田伽羅)の姿を通して、生きることの意味を問い掛ける人間ドラマ。河瀬監督が、ワカナを演じた内田が樹木の本当の孫だと明かすと「オオー!」と驚きと納得の声が上がり、樹木はすかさず「ちょうど(役柄と同じ)14歳ということでオーディションをちゃんと受けました。裏口ではありません」と続けて三度笑いをさらった。
また、本作の背景にある問題についての質問が上がると、「(「らい予防法」が廃止された)1996年という、20年もたっていない最近まで彼ら(ハンセン病患者)は閉じ込められていて、人生をまともに過ごすことができなかった。一番問題なのは、今なお鼻に後遺症が残っているとか手がないとかということで、外に出たら差別されるというような状況があることです」と切り出した河瀬監督。
「劇中、徳江さんは子供を持たなかったとありますが、実際もハンセン病を根絶するという考え方の下で、おなかに宿った子供は殺されていたんです」「(市原悦子ふんする徳江の親友)佳子さんが『わたしたちはお墓を作れない』と言っていましたがこれも本当で、ハンセン病の人はその家に生まれたことも全部隠して、家のことを守るために名前も変えて、そして亡くなってからもお墓に入れないという状況なんです。一番の今の彼らの悩みは、自分たちが死んでしまったら自分たちが存在したという事実も失われてしまうこと。それがとても怖い、とおっしゃっていました」と語る河瀬監督の言葉に観客は真剣に耳を傾けていた。(編集部・市川遥)
映画『あん』は公開中
第40回トロント国際映画祭は現地時間20日まで開催