三池崇史監督、撮影1か月前にドタキャンしたトム・ハーディに感謝
第40回トロント国際映画祭
現地時間18日深夜、第40回トロント国際映画祭でミッドナイト・マッドネス部門に出品されている三池崇史監督の映画『極道大戦争』の公式上映が行われ、異様な熱気に包まれる会場に同部門ではおなじみの三池監督が登場するとスタンディングオベーションが送られた。
初の国際映画祭参加が1997年のトロントだった三池監督は「監督としての自分の人生が大きく変わった場所です。『極道戦国志 不動』をやったときに観客の皆さんが一緒に喜んで映画を楽しんでくれて、自分のやっていることが伝わったという感触がずっと今まで自分を支えてくれました」と感謝。「今夜の映画は非常に教育的な映画で皆さんがお気に召すかどうかわからないですが、もし苦情があれば(プログラマーでこの日司会を務めた)コリンに言ってください」とジョークを飛ばすと大歓声が上がった。
ヤクザヴァンパイアにかまれた人間が次々とヤクザ化してしまうというオリジナルストーリーを、アクション、バイオレンス、着ぐるみ、怪獣など何でもアリで描いた本作。上映後のQ&Aに大きな拍手で迎えられた三池監督は、さまざまなジャンルの映画を作ることについて聞かれると「家族も居るので食べさせていかないといけない。こういう映画ばかりだと食い扶持を失ってしまう(笑)。あと1年か2年真面目に働いて、またストレスをためて爆発させる……その繰り返しです」と話して興奮冷めやらぬ観客から喝采を浴びた。
また、実現しなかった大作の話題になると「それを聞く?」と苦笑しながらも、「2度目か3度目のハリウッドのプロジェクトのお話で、もうあと1か月後に撮影で準備をしていたんですけど、その時の主演の俳優がドタキャンしたんです。それで弁護士から『もうなくなったから日本に帰っていいよ』という電話がかかってきて、暇になったんですよ」と初のハリウッド監督作となる予定だった『ジ・アウトサイダー(原題) / The Outsider』に言及。
その急きょ空いた1か月半~2か月で『極道大戦争』が完成したといい、「屈折した意味では、本作はハリウッドが作った映画と言っても過言ではない。時間をくれたハリウッドには感謝します。あれがなければここに立って皆さんに会えることもなかったので。だからドタキャンしたトム・ハーディにも感謝します」とさらりと続けて会場を沸かせた。
「製作費は少なかったですが、プロデューサーが自由を与えてくれた。映画に参加してくれた俳優たちもきっとストレスを抱えていて、小さな映画でも自由を欲しがった、それがこういう形になったのだと思います」と語った三池監督。「このように日本は非常に自由で良い国ですので、ぜひ一度来ていただけたらと」と日本をしっかりアピールすることも忘れなかった。(編集部・市川遥)
第40回トロント国際映画祭は現地時間20日まで開催