「ハリポタ」ヴォルデモートのようなハッキングプロジェクトを暴くドキュメンタリー
第66回ベルリン国際映画祭
現地時間17日、第66回ベルリン国際映画祭でコンペティション部門出品作『ゼロ・デイズ(原題) / Zero Days』(アレックス・ギブニー監督)の会見が行われた。脆弱性を解消する手段がない状態で脅威にさらされ、一刻の猶予もなく対策が迫られる状況を指すコンピューター用語「ゼロ・デイ」をタイトルに使った本作は、サイバー戦争の実態を明かすドキュメンタリー。エドワード・スノーデンが暴いたアメリカによる国家的なハッキングに迫る。
映画の中で「『ハリー・ポッター』でヴォルデモートの名前を口に出さないように、誰も名前を口に出さず、“オリンピック・ゲームス”と言い換えていた」と説明されるハッキングプロジェクトの名称は「スタックスネット」。イランの核施設を攻撃することを目的としたプロジェクトだ。それが実際に何を引き起こしたのか、ニュース映像、内部を知る者へのインタビュー、識者のコメントで解き明かしていく。
コンピューターウイルスが国際関係を変えたばかりか、ターゲットをこえて広がってしまうさまは、まさに「パンドラの箱を開けてしまった」と言うにふさわしい。ギブニー監督は「(アメリカには)隠された作戦によって予期しなかったことが次々起こり、もっと大きな問題を抱えてしまうというパターンがある。アフガニスタン(紛争)、イラク(戦争)なども不幸な成り行きだ」と語った。サイバー戦争の実態に戦慄せずにはいられないパワフルな映画だ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)