ベルリン史上最年少!日本の学生監督が大ベテランとコンビ上映
第66回ベルリン国際映画祭
現地時間17日、第66回ベルリン国際映画祭でフォーラム部門出品作である杉本大地監督の『あるみち』の上映前に、フォーラム・エクスパンデッド部門の森下明彦監督作『Xenogenese』が追加上映され、両監督が登壇した。杉本監督は正式出品された長編映画の監督としては本映画祭史上最年少となる22歳、一方の森下監督は35年前の作品を引っ提げての登場となる大ベテランだ。
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フォーラム・エクスパンデッド部門では、芸術的な映像作品を新旧問わず選出している。『Xenogenese』は35年前の10分弱の映像作品で、古さを感じさせないユーモラスな内容に加え、森下監督のキャラクターも場内を和ませた。
上映前の会場にピンと伸ばした手足をゆっくりと振り上げて入退場し、観客の笑いを誘った森下監督。そして『Xenogenese』の上映が始まると、同じ歩き方の若き森下監督の姿が映し出され、場内大爆笑。最初はその場を歩いて回っている画面が分割画面となり、歩く監督の姿を画面ごとに現したり消したりすることで不思議な効果を上げている。上映後に森下監督は「何度も何度も歩いて疲れました」と撮影時を振り返り、またもや爆笑となった。
その後に登場した杉本監督は、東京造形大学に在学中の22歳。『あるみち』も大学の課題として書いたシナリオが基だという。杉本監督が主演も務め、出演者も家族や友人で、自分自身の日常を切り取ったような映画ながら、素人くささはない。俳優ではない出演者たちから自然な演技を引き出すことにも、味わいのある良い表情を映すことにも成功し、最後まで見せきる。
大人になろうかという不安定な時代から、夢中で遊んだ子供時代を振り返るストーリーは、観た人にその時代を思い起こさせるような素直な魅力に満ちている。子供時代の自分の映像から始まる本作について、杉本監督は「小さい頃から大人になるまでに歩んできた道が、今、映画を撮っていることにつながっていると思い、今面白いことと昔面白かったことの関係性を探っているところです」と語った。
映画製作のため、壊れたバイクを買い付け、修理し、売るという転売で資金を集めたことを杉本監督が明かすと笑いと拍手が同時に起こった。ベルリンで温かく迎えられた本作の後では、バイクを修理せずとも資金が集まるに違いない。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)