森田剛、蜷川幸雄さんの“キセキ”かみしめ…宮沢りえと遺作を熱演
今年5月12日に永眠した蜷川幸雄さんが演出を手掛ける予定だった、舞台「ビニールの城」の公開ゲネプロが6日、東京・Bunkamuraシアターコクーンで行なわれ、出演している森田剛、宮沢りえ、演出の金守珍らが、蜷川さんへの思いを語った。
唐十郎の書き下ろし戯曲を舞台化した本作は、生身の人間と向き合わず、人形だけをひたすら愛する腹話術師・朝顔(森田)、朝顔に狂おしいほどの思いをぶつけるヌードモデル・モモ(宮沢)を中心に展開する力強い愛の物語。シアターコクーンの芸術監督を務め続けた蜷川さんが、亡くなる直前まで台本を病室の枕元においていたという。そんないわば「幻の蜷川作品」を、唐・蜷川を師とする劇団「新宿梁山泊」主宰の金守珍が、その遺志を継いで演出を務めた。
森田は「この作品は、蜷川さんが携わった最後の作品になりますが、こんなにすてきな出演者、スタッフが集結していることは蜷川さんが引き寄せてくれた奇跡だと思っています」と蜷川さんに思いをはせる。さらに稽古中は、「蜷川さんが見守ってくれているのをみんなで感じながら、演出の金守さんを信じてついてきました」といい、宮沢も「大好きな蜷川さんからそっと、手渡されたモノをギュッと握りしめたまま、森田さんをはじめ魅力的な共演者と、最高のスタッフと、密度の高いお稽古を重ねました」とコメント。二人とも常に蜷川さんの存在を感じていたようだ。
また、金守珍は本作を「人とつながりたい、愛したいという人間の根本的な希求をロマンチックかつ怖さを秘めて描いている本作は、唐作品の中でも最も美しく切ない芝居」と称し、「演劇人生の両師匠・蜷川さんと唐さんに、『どうですか?』と胸を張れる仕上がりになったと思う」と自信をのぞかせていた。(取材・文:尾針菜穂子)
芸術監督 蜷川幸雄・追悼公演「ビニールの城」は8月29日まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演中