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大竹しのぶの本気バトルにトヨエツ、『仁義なき戦い』かと思った

とにかく仲がいい豊川悦司&大竹しのぶ
とにかく仲がいい豊川悦司&大竹しのぶ - 写真:平岩亨

 テレビドラマ界で数々の賞を受賞してきた社会派作品の名手・鶴橋康夫監督と、大女優・大竹しのぶが16年ぶりにタッグを組んだ映画『後妻業の女』の“ぶっ飛んだヒロイン像”を、大竹と共演者の豊川悦司が振り返った。直木賞作家・黒川博行の受賞後第1作に基づく本作で、大竹は高齢者の財産を狙って結婚詐欺を働き、相手を殺して全財産を相続する形でぶんどってしまう希代の詐欺師・武内小夜子を怪演、観た者に強烈なインパクトを残している。

【写真】豊川悦司が仰天した『後妻業の女』女同士のつかみ合いのケンカ

 今、日本は世界でも類を見ない婚活ブーム。結婚相談所は全国におよそ4,000社、利用者は約60万人と言われ、「熟年結婚」とともに「熟年離婚」が劇的に増加した。そんな世相を背景にしたリアルな“後妻業”の事件簿を、鶴橋監督は得意なシリアスタッチで描くのではなく、大胆なピカレスク・コメディーのフィルターを通して一大“人間喜劇”に転換! その真ん中で大竹ふんする強烈なキャラクター、小夜子は悪の魅力を思いっきり弾けさせ、笑ってしまうほど欲深く、しかもいとおしさを感じさせるほどに人間臭さを発散する。

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 撮影中もインパクトあるエピソードに事欠かず、津川雅彦ふんする“9番目の夫”との散歩シーンで、鶴橋監督が「そこで津川さんをパーンとたたいたりできますか?」と指示を出すと、大竹は「できます」と答え、その通りに演技。が、カットの声がかかったあと、彼女をよく知る鶴橋監督でさえ「大竹さん強いなあ~。でもあそこまでやらなくても……」とあまりの憑依ぶりにちょっと引いていたという。また、小夜子と共に独り身の老人をだましていく結婚相談所所長役の豊川は完成作を観て、大竹と尾野真千子の焼肉屋でのガチンコバトルに驚愕。「いきなり『仁義なき戦い』が始まったかと思った。本気でやり合っていて、(凄すぎて)2人ともまるで女ヤクザ。自分が出ていないシーンで本当によかった」と感想を述べた。

 だます側もだまされる側も登場人物は、どこかおかしみのあるキャラクターばかり。娯楽性の高いエンターテインメント作品でありながら、現代の日本人が直面している家族の現実を浮き彫りにし、「自分の身にも起こるかも?」「老いた父は大丈夫だろうか?」と、思わず胸に手を当ててしまう人間ドラマでもある。小説は「後妻業」というタイトルだが、「完成作の仕上がりを観て、大竹さんの圧倒的演技に魅了され、原作者に相談し、タイトル変更の許可を得た」とは鶴橋監督。変わらぬ大竹しのぶパワー恐るべし、と言ったところだ。(取材・文:轟夕起夫)

映画『後妻業の女』は8月27日より全国公開

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