あのスピルバーグが「無理かも…」と苦戦!『アバター』を超えるミッションとは?
スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の主演俳優マーク・ライランスが、ジェームズ・キャメロンによる3D映画『アバター』(2009)よりもさらに進化した特殊視覚効果の制作舞台裏を明かした。
【動画】しゃべり方にクセがあるけどこんな巨人がいたら友達になりたい!
児童文学作家ロアルド・ダールの名作「オ・ヤサシ巨人BFG」に基づき、ロンドンの児童養護施設で暮らす好奇心旺盛な少女ソフィーと、夜ごと子供たちに“夢”を吹き込む仕事をする心優しい巨人BFGの、ちょっと奇妙だけれど心温まる友情を描いた本作。その巨人を演じるのは、スピルバーグ監督の前作『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)でアカデミー賞助演男優賞を獲得した英国の名優マーク・ライランスだ。
シェイクスピア劇を中心に舞台で数多くの演劇賞に輝き、映画やテレビドラマでもシリアスなドラマ作品の多かった彼にとって、今回は初めての本格的なファンタジー映画。しかも全編にわたってモーションキャプチャーを駆使したCGキャラを演じるということで、これは難しい撮影になると覚悟して現場に臨んだという。だが、ふたを開けてみると予想外に作業は楽なものだったそうだ。
通常の映画における演技との違いは、毎朝撮影前に行われる準備だった。モーションキャプチャー・スーツを着て、コンピューターの前に置かれた足場の上に立ち、カメラに向かってさまざまな動作をしてみせる。そうしないと、コンピュータが彼の動きを認識しないからだ。「こんなにたくさんの写真を撮られたのは生まれて初めてだった」と本人も苦笑い。
しかし、それがすんだら後は自由に演技をするだけ。そればかりか、普段の撮影と違って現場に照明やセットはないし、視線や顔の向きも気にしなくてすむので、大変な開放感を味わえたそうだ。しかも、スピルバーグ監督は(映像に映りこまないため)、マークのすぐ隣で演技指導に当たるという贅沢な経験。ただ、あまりにも距離が近いので「もうちょっと離れてくれないかなって時々言わなくちゃならなかった(笑)」という。
その一方で、スタッフには難問が立ちはだかっていた。それは、カメラで撮影した実写キャラとコンピューターで作ったCGキャラの共演だ。「アバター」では同様のシーンが二つしかなかったが、本作ではほぼ全編にわたっている。しかも、実写の少女ソフィーは普通の子供サイズ、BFGは身長7メートル、それ以外の巨人はさらに大柄。この全く大きさの違う複数のキャラを一つの画面で共演させることは非常に困難だったのだ。
「当初はスピルバーグ監督も、『もしかすると無理かもしれない……』と漏らしていた」とマークは語るが、それでもスタッフと一丸になってあきらめることなく、この不可能と思われた複雑な作業を見事にやってのけたわけだ。「これは技術的な革新だと思う」と胸を張るマーク。本作は、『アバター』を超える技術に挑んだめくるめく映像を堪能できる野心作となっている。(取材・文:なかざわひでゆき)
映画『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』は9月17日より全国公開