ガエル・ガルシア・ベルナル、ラテンアメリカ映画界に貢献「母国語で映画を作るべき」
メキシコの俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが、スペインで開催中の第64回サンセバスチャン国際映画祭で、第1回ジャガー・ルクルト・ラテンアメリカ賞を受賞し、セレモニーが行われた。セレモニー前に行われた記者会見でベルナルは、「初めてここに来たのは『アモーレス・ペロス』(1999)の時。22、23歳で声も違うし、宿泊先のホテルも当時と今とでは全然違うし(苦笑)。そんな自分がこんな名誉ある賞をいただけるなんて光栄です」とはにかみながら語った。
【写真】若っ!『アモーレス・ぺロス』のガエル・ガルシア・ベルナル
同賞は今年新設されたもので、ラテンアメリカ映画界で多大なる功績を築き上げてきた人物に贈られるもの。ベルナルはまだ37歳だが、『アモーレス・ペロス』でアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と共に世界へと飛び出し、続く『天国の口、終りの楽園。』(2001)では共演者のディエゴ・ルナと共に第58回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞。『太陽のかけら』(2007)では監督デビューを飾り、プロデューサーとしても活躍している。
昨今は、新たな才能の活躍を精力的に後押ししている。特に『NO』(2012)でコンビを組んだチリのパブロ・ラライン監督は、第65回ベルリン国際映画祭の『ザ・クラブ(英題)/ The Club』(2015)で審査員特別賞・銀熊賞を受賞。ベルナルも出演している新作『ネルーダ(原題)/ Neruda』(2016)も本年度のカンヌ国際映画祭の監督週間に選出された。同作は今回のサンセバスチャン国際映画祭でも、世界の映画祭での話題作を集めたパール部門で上映されている。
ベルナルは約16年の歩みを振り返り「『アモーレス・ペロス』のころは、メキシコでは年間6本しか製作されていませんでした。それが今ではほとんどの映画が米国公開されるに至っています。ラテンアメリカ映画界は皆が家族や兄弟のように協力し合ってきた。そこに成長の鍵があるのではないかと思います」と感慨深げに語った。
一方で、映画の中でラテンアメリカ文化の保全と継承の重要性にも言及し、「わたしたちはスペイン語で自分たちの物語を語っていくべきだと思います。世界市場を考えて英語で作らねばと(スペイン語での製作を)あきらめてしまう傾向もありますが、そうすると作品の魅力が失われてしまうのではないでしょうか」と、ラテンアメリカ映画界を牽引する存在らしく、力強く語った。(取材・文:中山治美)
第64回サンセバスチャン国際映画祭は9月24日まで開催