細田守監督、『ハウルの動く城』をクビになった挫折を振り返る
第29回東京国際映画祭
人気アニメーション作家・細田守監督が27日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた第29回東京国際映画祭内の特集上映「映画監督 細田守の世界 作家性の萌芽 1999-2003 (細田守監督短編集)」に来場し、『ハウルの動く城』(2004)の苦い挫折を振り返った。
【写真】細田守監督がクビになったジブリアニメ『ハウルの動く城』
アニメファンのみならず、映画ファンにもその名前を知らしめた出世作『時をかける少女』(2006)より前に、細田監督が発表した作品を集めた本特集。『劇場版デジモンアドベンチャー』(1999)、『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)、テレビアニメ「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」40話「どれみと魔女をやめた魔女」(2002)、テレビアニメ「明日のナージャ」(OP、ED)(2003)などがスクリーンで上映された。客席には幼い頃に「デジモン」や「おジャ魔女どれみ」などをリアルタイムで観ていたという観客もチラホラ。それには細田監督も「ありがとうね。同窓会みたいな気分で、おじさんうれしいよ」と感激しきり。会場は温かな雰囲気に包まれた。
最後に上映されたのは「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」40話。自分の進路を見失った魔女見習いのどれみが、年をとらない元魔女の未来(声:原田知世)と交流を深め、「外国に一緒に行かないか?」と誘われるエピソードで、同作を観たという丸山正雄プロデューサー(当時、マッドハウス取締役社長)との出会いが、やがて『時をかける少女』につながったという記念碑的な作品である。
この日の聞き手を務めたアニメ評論家・氷川竜介氏からの「チャンスがあったら飛び移れ、というのは自身を投影しているのでは?」という指摘に、「僕はどちらかというと。飛び移り損ねた方。当時は『ハウルの動く城』の監督をクビになって、もう映画が作れないという気持ちのままに、この40話になだれこんだんです」と告白した細田監督。「人生のチャンスがふいに訪れるとして、その瞬間にどちらかを選択しないといけない。でもその瞬間はいつ来るかわからない。通り過ぎた時に初めてチャンスを見送った気分になるんです。そういう時って、わななくとか怒るとかじゃなくて、ただボーッとしてしまう。でもそれは失敗じゃなくて、それも人生の味わい方の一つじゃないか。そんなつもりで、どれみの顔を描いた気がします」と述懐。
さらに「飛び移ることができなかった自分のもの悲しさが、作品にも漂っていたのでしょうか。でも、それを丸山さんが観て、『時をかける少女』につながるんだから世の中ってわからないものだと思います」としみじみ付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
第29回東京国際映画祭は11月3日までTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか都内各所で開催中