『逆シャア』の名セリフに我が意を得た 『ガンダム THE ORIGIN』安彦良和インタビュー
テレビアニメ「機動戦士ガンダム」(ファーストガンダム)でアニメーターとして制作の中核を担い、自身が筆を執ったコミックをアニメ化したシリーズ第4弾『機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜』を完成させた安彦良和総監督が、19日にスタートしたイベント上映を前に思いを語った。
映画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜』場面写真
『THE ORIGIN』は、テレビ版で主人公アムロと運命的な戦いを演じる人気キャラクター、シャア・アズナブルと妹セイラ・マス、その母とのエピソードなど、テレビでは描かれなかった過去を追ったシリーズ。4作目では、シャアと、彼の運命を大きく変えることになる少女ララァ・スンとの出会いが描かれる。
劇中で2人が初めて会話する場面では、シャアの穏やかな一面が表現されており、「シャアがなかなか見せないヒューマンな部分が出ています。恐らくこれより後にはないんじゃないのかというくらい、レアなシーンですよね」と安彦総監督は語る。「ファーストガンダムでの2人の関係は、あえてハートフルな感じに表現されていなくて、特にララァは、ある種別の世界に行ってしまったキャラとして描かれています。でも、出会いから2人を描くのであればそれじゃいけないわけで、思い切り人っぽく描きました」。
ララァに対する思いをシャアがあらわにする場面といえば、ガンダムの生みの親・富野由悠季監督による劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)で、シャアがアムロに言い放つ「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」というセリフ。はるか過去を描いた『運命の前夜』では、かつて観た『逆襲のシャア』に思いをはせるファンも多いはずだ。
しかし、「ガンダム」シリーズに限らず「あまり人の作り物(アニメ)を観てない」という安彦総監督は、『逆襲のシャア』も未見。「周りからそういうセリフがあったって言われたんです。我が意を得たりだったんだけども、何でそんなセリフに気が付かなかったんだろうと思ってファーストガンダムのシナリオを全部探しても、そんなセリフどこにもない。そしたら続編に出てくるんだって聞いて、良いこと教えてもらったと思いましたね」と振り返る。「富野由悠季はそこまでやっていたのかって思って。続編でってのはないだろうって思ったけども(笑)、それを含めて彼らしいというか。それを知る前に僕は(コミックやアニメで)母親のエピソードを描いたから、あったのそんなセリフって」。
また本作では、迫力のモビルスーツ戦も見どころのひとつ。「今回はモビルスーツも格闘するしガンダムのシルエットも出ますし、相当(ガンダム)らしいんじゃないのっていうふうには思っています」と笑みを浮かべる安彦総監督は、同時に人間的なドラマも“ガンダムらしさ”の一つだといい、「(戦争は)生身の人たちがやっていることなんだという部分を外してはいけない。良いとか悪いとかじゃなくて、人ってこうだよなという要素が、あの物語世界の中にうまく散りばめられていて、そういった面を大事に掘り起こして、少なくとも、描き方がたりていなかったから、そういう一面に気がつかなかったとならないようにしていきたいんですよね」と力強く語った。(編集部・入倉功一)
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜』は新宿ピカデリーほかにて2週間限定イベント上映中
「Blu-ray Collector’s Edition」を上映劇場にて先行発売