木村拓哉、かっこよすぎ!『無限の住人』三池崇史監督が絶賛
近年ざっと振り返っただけでも『テラフォーマーズ』『神さまの言うとおり』『土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI』と人気漫画の実写映画化を手掛け、海外のクリエイターにも影響を与え続けている映画監督・三池崇史。今後の公開作品にも複数のコミック実写化を控える中、木村拓哉を主演に迎えた時代劇アクションエンターテインメント『無限の住人』をどうやって作ったのか。今年の1月8、9日に報道陣に公開された撮影現場で、その一部が明らかになった。
木村拓哉VS福士蒼汰、激しい決闘…『無限の住人』撮影現場フォトギャラリー
京都の山にある広さ2,500平米の更地を、1か月半かけて映画のためのオープンセットに作り替えた当日の撮影現場。45メートルの大きな橋やほこら石も手作りし、三池監督のリクエストである滅びた町を出現させた。侍のエキストラ約300名が集結し、木村やヒロイン役の杉咲花が立つ熱気を帯びた空間は、その広大さゆえ、拡声器を使った三池監督の声が響いていた。悪役・天津影久にふんした福士蒼汰との激しい決闘のシーンでは、不老不死の肉体を持つ片目の侍・万次役の木村が鬼の形相で剣を振り下ろし、風を切る音が鳴る。テスト段階から迫真の演技を見せる木村に、三池監督は思わず「うわっうわっ」と何度も声を上げ、アクションのカッコよさやクオリティーの高さに驚き、感激していた。
木村の主演は、三池監督の名指しをきっかけに実現した。100人斬りと称される伝説の剣士・万次という原作漫画のキャラクターと木村は似ているという三池監督。「非常に運命的な役。木村さんという、すごく特殊な、日本で唯一スーパースターと言える人物。万次は誰も知らない闇の世界に生きている奴だけど、ジャニーズに入ったらきっといい線行ってたんじゃないかな(笑)。全く違うところで生まれ育った人が作り上げたキャラクターだけど、どこかリンクするところがある。そういう気配はものすごく感じています」と不思議と一致する主人公像に手応え十分の様子だ。
初めてタッグを組んだ木村との仕事については「なんか住む世界が違うような人でしょ。いるよ! って毎朝。当然現場に来るんですけど、万次暴れてるよ! 昼飯食ってるよ! みたいな(笑)。非日常的な物語を作っている分だけ、逆にリアルな木村拓哉という人物を感じることができる。自分のようなエンターテインメントを作っている人間にとっては、夢みたいで。母親もびっくりしていますからね。『いよいよあんた、木村拓哉か~』って(笑)」とミーハー心ものぞかせた三池監督。
役に挑む木村の姿勢は「一つ一つに全力で、コツコツ」だといい、「毎日朝5時半くらいから支度して片目になる。夜まで撮影があるのに、食事の時も含めてずーっとそのまま。夜中までとなると芝居どころじゃなくて、普通発狂しますよね。でも抑え込んでいる。だって、万次がそうだから。立ち回りの距離感もわかんないんですよ。危なくて無理だよねっていうところを、『だって万次だから』と言ってやる。あと、今のところずっと裸足。引きだから地下足袋を履いていてもわからないような場面でも、ずっと裸足に草履だけで、条件の悪いところでズタズタになりながら撮影している。そこがやっぱり驚きですよね。素晴らしいと思います」とどんな時でも万次として存在する木村を絶賛した。
三池監督にとって時代劇は「ギラギラと斬り合っていい世界なので、どうしても逃れられない人間の動物としての本質、地球で生きていくための本当の姿のようなものを平気で出せる」舞台。「現実世界でルールに乗っ取って、仲良く平和に生きていくために生まれるストレスみたいなものを発散し、焼き付けられる」。それが、時代劇の面白さだと付け加えた。
血がたくさん出る映画が特に好きというわけではない。「たまたまそういう仕事が多くて誤解されがちなんだけど」と前置きしながら、今作について「半端な斬り方をしない登場人物をリスペクトしていくと、原作と結びついて僕らの解釈が入り、ある色が出てくる。それは決して自分の個性ではなく、キャラクターたちの個性を『きっと、こうだよね』と守って出来ていくもの。血のりは生きている証でもあるわけで、暴力って美しいものではないし、否定すべきものなんでしょうが、瞬間に何か光るものがある」と語り、原作への敬意を前提とする“三池流映画作りのレシピ”の一端を見せた。
映画『無限の住人』は、沙村広明の同名人気コミックの実写化。唯一の肉親である妹を殺された侍・万次が、両親を殺された少女の復讐(ふくしゅう)を手伝うために用心棒となり、壮絶な戦いに身を投じていく姿を描く。木村との映画初共演が話題の市川海老蔵のほか、市原隼人、戸田恵梨香、北村一輝、山崎努、田中泯、栗山千明、満島真之介も出演する。2017年4月29日から全国公開。(編集部・小松芙未)