略奪婚したけど夫を元妻に返したい…妙にリアルなストーリーはこうして生まれた!
略奪婚した夫を元妻に返そうと思い立つヒロインたちのねじれた三角関係を描くラブコメディー『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』でメガホンを取ったレベッカ・ミラー監督が、本作のユニークなストーリーから結婚観についてまでを語った。
ニューヨークで暮らす30代のマギー(グレタ・ガーウィグ)は、子供を産みたい一心で人工授精も検討していたある日、既婚の文化人類学者ジョン(イーサン・ホーク)と恋に落ちる。ジョンは、教授としてバリバリ働く妻ジョーゼット(ジュリアン・ムーア)と離婚するものの……。
このなさそうでありそうな(?)奥深いストーリーは、ミラー監督の友人が執筆した未完成・未出版の本に書かれていたある章が出発点になっているという。「ある女性が既婚男性と恋に落ちるも、何年か経って、やっぱり彼には前妻にぴったりだったと気づき、さあどうするか? というのが本作の主題。おとぎ話のようでありながら、妙にリアリティーがあるのよね。この作品を観た多くの人が、『なるほど、悪くないアイデアかも』と思うんじゃないかしら」。
そのアイデアの一部は、親友にして、本作では風変わりなジョーゼットを演じたジュリアンから聞いた話にヒントを得ているのだとか。「ジュリアンの友人が再婚して2つ目の家族を持ち、それぞれの子供たちとの旅行の企画や手配に腐心して、『こんなはずじゃなかった』と感じているというの。『この再婚には、こんなに苦労するほどの価値があるんだろうか?』と考えるようになり、いつしか恋愛感情が消え、日々の生活の現実的な問題だけが残ってしまったそう」。
そんな結婚生活のシビアな一面を扱っていながらも、家族を持つことの素晴らしさを説教くさくなく描いているのが本作の魅力だ。「この作品の感動的なところの1つは、登場するすべての人々が、結局は“持ちつ持たれつの関係”にあるということ。みんながある意味、お互いの面倒を見ている。それってとても美しいことなんじゃないかって私は思う。私たち人間には、お互いのギャップを埋めようとするところがあるし、人間の本能で家族をつくろうとする。そうしてできた家族が、当初意図した形ではないかもしれないし、再編成もあったりするけれど、最後にはどうにか落ち着くものだと」。
ミラー監督自身は、アカデミー賞主演男優賞を3度獲得した唯一の俳優、ダニエル・デイ=ルイスを夫に持つが、ずばり結婚をどのように考えているのだろうか。「長く続く結婚生活は築き上げていくものだと思うわ。それは思いやりの気持ちや、思い出を大切にすることだったり、お互いを深く知っていることは素晴らしいことよね」。さらに「私たちは、“結婚は永続するもの”という忠誠心を持っているけれど、その概念は少しずつ変わってきていると思う。今はすべてがオープンになっていて、私たち自身で人生を選べるようになっているけれど、そこには混乱も生じるのよね」と続ける。
「自分の人生は自分で築けるということに気付くのは素晴らしいこと。でも謙虚さも必要。運勢を切り開けても、運命のすべてをコントロールすることはできないから。それでも、自分の生き方は選べるし、それは人生において正しい姿勢だと思う」と熱弁。また、本作に数多くの日本にまつわるものが登場することからもわかるように、7歳で訪れて以来、日本が好きだというミラー監督は「日本にまた行きたいわ。次の映画を撮る頃には、下の子供も大きくなっていて、いろんなところに行く時間ができているかしら。日本に行く計画は絶対に考えるわ。私の人生の新たな章が始まるような気がしているの」と胸をおどらせていた。それを聞いて、「若いときは、マギーに近かった。でも同時に、ジョーゼットっぽさも自分の中にかなり存在しているから、何とかやってこれた」というミラー監督の言葉を思い出さずにはいられなかった。(編集部・石神恵美子)
映画『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』は1月21日より全国公開