できれば人前に立ちたくない!? 中谷美紀の意外な素顔とは?
テレンス・マリック監督による壮大な映像詩『ボヤージュ・オブ・タイム』で日本語版ナレーションを担当した中谷美紀が、女優らしからぬ(?)意外な素顔を明かした。
マリック監督が構想40年を経て完成させたライフワークとも呼べる本作は、宇宙の始まりから生命の歩みの本質を、最新の映像技術と長年かけて撮影してきた実写を融合させて語るもの。ケイト・ブランシェットによるナレーションの日本語版に指名された中谷は「ナレーションのお仕事って、大好きなんです」と言葉に力を込める。しかし、その理由を「人に見られずに仕事ができるなんて、こんなにありがたいことはないですから!」と冗談めかして続けるのは、テレビドラマや映画だけでなく、近年は舞台でも高い評価を受ける彼女だけににわかには信じがたい。
「もともと、どちらかというと人前に立つのは苦手なのですが、ご飯を食べなくてはいけないので(笑)。ナレーションで食べていけるなら、そっちに移行したいくらいです」と笑うが、「声だけの表現に集中できるから」と続けるのは彼女らしい。
中谷の場合、演じる喜びは人前に立つときより「台本を読んでいろいろと考えているとき」にある。実は舞台も本番より稽古の方が好きで「物語を解釈することが楽しい。あるいはその解釈が、演出家のご指導によって広がる瞬間が。一冊の台本を時間をかけてかみ砕き、稽古ではたった一人の個人的解釈でなく、演出家の導きで思いもよらない新たな解釈が生まれる。その瞬間が楽しいのです」と深みのある演技がいかに生まれるかを明かす。
それだけに「この方になら委ねられる、そう思える方と出会うことが一番大事」と女優業が人とのつながりの上に成り立つことを強調する。その決め手は感覚的なもので「美しいものが好きなんです。醜いものを描くにしても、先に美しいものの基準がないと描けません。その美しいものの基準が似通う人、でしょうか? 見た目の美醜に関してだけではない、しっかりとした美の基準を持つ方。審美眼のある方が好きです」と言い切る。マリック監督はもちろんその一人だと続ける彼女はきっとこれからも美を知る作り手と組み、美しい物語を紡いでいくのだろう。(取材・文:浅見祥子)
映画『ボヤージュ・オブ・タイム』は3月10日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開