『怪しい彼女』タイ版が日本で初上映!世界でリメイク中 - 第12回大阪アジアン映画祭
韓国映画『怪しい彼女』のタイ版リメイク映画『突然20歳 タイの怪しい彼女』(アーラヤ・スリハーン監督)が、このほど開催された第12回大阪アジアン映画祭で日本初上映された。
本作は、お婆さんが不思議な写真館で撮影したところ20歳に若返り、失われた青春と家族の絆を取り戻すハートフルコメディー。韓国の映画会社CJエンタテインメントのワンソース・マルチユース(1つのコンテンツを複数のメディアで使用する)戦略として、各国でリメイクを製作している。これまで、中国版『20歳よ、もう一度』(2015)、ベトナム版『ベトナムの怪しい彼女』(2015)、日本版『あやしい彼女』(2016)が誕生した。
ライバル心が働くのか、各国とも競うようにトップ女優を主演に起用。中国版は歌手としても活躍する映画『So Young~過ぎ去りし青春に捧ぐ~』のヤン・ズーシャン。ベトナム版は人気歌手のミウ・レ。日本版は多部未華子。そしてタイ版は、映画『愛しのゴースト』(2013)が同国歴代興行収入1位に輝いた、タイとベルギーのハーフである女優ダビカ・ホーンが抜てきされている。
物語の大筋は同じで、所々に各国ごとのアレンジが施されている。中でもお国柄があらわれるのは、歌手志望だったヒロインが歌う懐メロだ。日本版では坂本九の「見上げてごらん夜の星を」や美空ひばりの「真っ赤な太陽」、ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」など、多部演じる主人公が青春を過ごした1960年代のヒットソングが使用され、観客の郷愁を誘った。
タイ版も同様なのだが、そのうちの一曲が番匠義彰監督『ここに幸あり』(1956)の同名主題歌。歌手・大津美子が歌う楽曲はアジア各国で大ヒットし、タイでは1976年にカバー曲もリリースされた。現地ではオリジナルが日本の曲だと知る人は少ないようだが、思わぬところで音楽の力を知らされる。
そして現在、インドネシア版『怪しい彼女』も製作されている。今年の大阪アジアン映画祭で上映されたインドネシア・マレーシア合作『うちのおバカ社長』(2016)のウピ監督が手がける。さらにインド版、スペイン語版、英語版の企画も進行中だ。比較して鑑賞する楽しみだけでなく、ビジネスモデルとしても注目したい。(取材・文:中山治美)