ラストシーンの意味は?「カルテット」の“グレー”な最終回が大反響
松たか子×満島ひかり×高橋一生×松田龍平主演の人気ドラマ「カルテット」(TBS系)が21日に最終回を迎え、前回から1年後の物語で4人がたどるラストが反響を呼んでいる。
母親は自転車事故で死亡し、義父から虐待を受け、ある女から戸籍を買って別人として生きていたという真紀(松)の壮絶な過去が明かされた前回。刑事が任意同行を求めてやってきたことから、すずめ(満島)にヴァイオリンを預け、必ず4人のもとに戻ることを約束して別荘を去った真紀だが、最終回はその1年後、真紀のスキャンダルが世間に知れ、一変したそれぞれの生活から始まる。
裁判が終わってからも戻らない真紀にさまざまな思いを抱くメンバーたちと、彼らに迷惑をかけることを恐れたのか、一人ひっそりと暮らす真紀。そんな彼らの感動的な再会はさることながら、最終回を盛り上げたのは、音楽の道をあきらめた匿名の人物からカルテットドーナツホールに贈られた一通の手紙。その手紙には「あなたたちはすぐれた音楽ができる過程で出てきたよけいなものにすぎない」「なぜ才能もないのに(音楽を)やめないのか」と辛らつな言葉がつづられていた。しかし、真紀はショックを受けるどころか、「疑惑の美人ヴァイオリニスト」「ニセ早乙女真紀」とゴシップ誌の餌食になっている自分の知名度を利用し、今こそ「いつか満員のコンサートホールで演奏する」4人の夢を実現しようと提案する。
生涯に一度かもしれない大ホールでのコンサートの後、ある日楽器を手にどこかへ向かう4人が車中で主題歌の「おとなの掟」を口ずさむラストシーンは、「そう人生は長い 世界は広い 自由を手にした僕らはグレー」の歌詞が彼らの心情を代弁しているかのよう。晩餐のメニューが第1話に登場した「唐揚げ」だったり(今度はレモンではなくパセリ問題が持ち上がる)、最終回の予告がゲームの「ドラゴンクエスト」を模した演出だったのをうけ、4人がコンサートで演奏する曲目に「ドラクエ」のテーマ曲が登場するなど、ドラマを見守って来たファンを喜ばせる仕掛け&演出が見られた。
安易な感動を排し、視聴者に解釈をゆだねるラストに「はっきりしなくても生きていくことには変わりない。白黒つけなくても生きていける」「人生は生きるに値するものだと教えてもらった気がします」「救われました。だめな自分と認めようと思いました」と勇気づけられた視聴者のコメントが後を絶たず、本作のプロデューサー・佐野亜裕美は、公式Twitterで視聴者に感謝を述べるとともに「このドラマが、生きにくさを感じている人の背中をそっと押すような作品になったら幸いです」とコメントしている。(編集部・石井百合子)