現代版『雪女』はSF要素も!主演・脚本・監督を務めた女優が明かす
映画『歓待』『欲動』などで海外の評価も高い杉野希妃が主演・脚本・監督を務めた話題作『雪女』について語った。
本作は小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)の「雪女」が原作のラブストーリー。雪女(杉野)と遭遇した漁師、巳之吉(青木崇高)が、ある事件を機に愛する妻が雪女ではないかという疑念に駆られていく。
「雪女」の新たな解釈について、杉野は「原作を読んで、『雪女がなぜ人間界に来て、人間と交わろうとしたのか』という疑問を持ちました。もし雪女が人間に関心を抱き、異種として人間と交わることで、人間を試したとしたら、それは今こそ語られるべきだと思ったのです」と説明。「原作者の八雲(ギリシャ出身)は日本人のせつさんと、当時は珍しい国際結婚をしたため、雪女の物語は彼自身の話にも捉えられると思いました。(原作の)人間と雪女との間に誕生した十人の子供たちに思いをはせながら、本作では娘一人に集約させ、わたしなりの現代への思いを込めました」。さらに、原作の寓話的な世界観を残し、SF的要素も含めたと語った。
小泉八雲作品との接点について「ニューヨーク在住の女性プロデューサーに彼の素晴らしさを学んだことがきっかけで、4年前に彼の本を熟読しました。100年以上前にギリシャ出身でアイルランドで育ち、アメリカに渡り最終的に日本にたどり着いた彼が、日本の美しさ、慎ましさ、全てに魂は宿るという精神に向けたまなざしこそが愛と思い、感銘を受けました」と答えた。杉野自身も韓国留学や海外映画祭の経験を通して、日本文化の素晴らしさを再認識したようだ。
原作の雪女を自然の化身と見立てると、人間との距離感が大切なものに見えてくる。「善と悪、夢とうつつ、生と死。何に対してもはっきりと線引きはできないはずなのに、われわれは無意識に線引きしています。同様に自然と人間は本来、線引きできないものではないでしょうか。自然という恩恵の中で、自然の一部として生きるのが人間だと捉えました」。人間と、切っても切り離せない関係こそが「雪女」(自然)なのかもしれない。
幅広い演技力を披露する青木について「巳之吉が妻は何者かと葛藤する姿を通して、曖昧なものを曖昧なまま受け入れられない人間の悲しいさがを表現したかったんです。そこで低温で表情の変化を抑えた雪女とは対照的な、人間味溢れる動的な印象の青木さんに演じていただきました」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
映画『雪女』は3月4日より全国順次公開中