多才な星野源、唯一無二の存在感を放つ理由
森見登美彦によるベストセラー青春恋愛小説をアニメーション映画化した『夜は短し歩けよ乙女』で、アニメ声優として単独初主演を果たした星野源だが、昨今のブレイクが必然だったと確信したくなる、唯一無二の魅力とは。
役者としての活動に加え、音楽家、文筆家と多才ぶりを見せつけ、いま一挙手一投足が注目される星野。その人気を本人は「とてもうれしいです。でも、実感しているわけではない」と謙遜しつつも、外出先や飲食店で必ず声を掛けられるようになった日常を明かした。
出演オファーも殺到中かと思いきや、「どうなんでしょう? 事務所の方が堰き止めてくださっているのかもしれないです(笑)」と自覚はない模様。俳優業への強い意欲を抱える一方で、「今年の目標は『無理をしない』ですから、身体も心も穏やかな状態で楽しく仕事ができるように、スケジュールを組んでいただいているところです」と“心身の健康ファースト”を実践中のようだ。
福山雅治やピエール瀧ら、俳優としての活躍もめざましいミュージシャンの存在と重なるが、「一緒に語っていただくこともあってありがたいですけど、申し訳ないというか、あんまり考えたことはないです。音楽も芝居も中学から趣味のようにやっていたことなので」と自然体の彼らしい答えが返ってきた。中学生のころ始めた俳優業については、自分の存在を消すこと、音楽家・文筆家としては自分を表現することが求められると自己分析する。
そんな星野の新たな魅力が発揮されているのは、湯浅政明監督の新作アニメーション『夜は短し歩けよ乙女』の先輩役だ。京都を舞台に、ユーモラスかつファンタジックな一夜の物語を描いた本作で、大学のクラブの後輩に想いを寄せながらも、外堀を埋めるばかりで一向に進展させられない恋に純粋な男性の声を担当している。星野の最大の魅力の一つでもある“声”を存分に堪能することができる。
枠にとらわれず、才能がまた別の才能を開花させるという特別な魅力を持つ男・星野源。様々な分野での活動について、「それぞれの違った面白さ」を楽しんでいるという、その純粋な好奇心こそが最大の強みだと言える。これからも唯一無二の輝きを放ち続ける星野の活躍から、目が離せそうにない。(取材・文:柴田メグミ)
映画『夜は短し歩けよ乙女』は全国公開中