ジェレミー・レナー、物理学者役も余裕「物理の概念なんかはサラッと理解できた」
SFモノでありながら、今年のアカデミー賞で作品賞にもノミネートされた映画『メッセージ』(5月19日公開)で、謎の知的生命体との交信に挑むイアン・ドネリーを演じたジェレミー・レナーが、役に共感した理由や、完成作を観たときの驚きについて語った。
イアン・ドネリーは原作(テッド・チャンの『あなたの人生の物語』ではゲイリー・ドネリーという名)でも、この映画版でも物理学者。役作りについて、ジェレミーは意外な過去を告白する。「映画のために、2週間くらいかけて物理学などの本を読んだ。実はもともと物理や数学は得意だったんだ。大学で2進法やコンピュータ言語を専攻していたからね。脚本を読んで、イアンが提案する物理の概念なんかは割とサラッと理解できたかな」とほほ笑むジェレミー。
ヒロインの言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)とともに、空中に浮かぶ球体の巨大宇宙船に入っていくイアン。重力が変化し、信じがたい姿の地球外生命体「ヘプタポッド」が現れるシーンの撮影では、ジェレミーもユニークな体験をしたという。「ヘプタポッドはCGだけど、僕らの頭上でプロの人形遣いがそれらしい模型を動かしてくれた。重力の変化は、特殊なリフトにケーブルでつながれて空中遊泳するように演じた」とのこと。最もハードだったのは、船内に入る際に着用する防護服で「頭部のガラスがすぐ曇って、カメラの位置や共演者の表情も見えなくなるし、どこを歩いているのかもわからなくなった」と撮影時の苦労を振り返る。
そして完成作を初めて観たときの印象を、真剣な表情でこう語った。「エンドクレジットが流れたとき、僕はたまらず劇場の外に出てしまった。車を停めていた駐車場まで来たとき、泣きながら『くそ、何て素晴らしい映画を作ってしまったんだ、この監督は!』って、思わずつぶやいたよ」とドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の手腕に驚嘆。撮影現場での監督の情熱や野心にも感心したというジェレミーは「彼の次回作『ブレードランナー2049』に呼ばれなかった」と残念そうな表情。そんなヴィルヌーヴ監督にも一つだけ不満があると言い「英語がヘタなんだよね。母国語がフランス語だから仕方ないけど。もっと勉強してほしいな」と冗談まじりに話した。(取材・文/斉藤博昭)